管理職も勤怠管理は必須!管理監督者のルールを正しく把握しよう

勤怠管理


管理職には割増賃金を支払わなくてよい、勤怠管理も不要、という声を聴くことがあります。しかし、これは大きな勘違いで、管理職であっても深夜業の割増賃金支払いや勤怠管理は必要です。そもそも、労働基準法における「管理監督者」とは、誰のことを指すのでしょうか。

今回は、勘違いしがちでトラブルにもなりやすい管理監督者の勤怠管理について、改めて確認してみましょう。

 

管理監督者が適用除外になるものは何か

 管理職の勤怠管理は不要、と勘違いしている方の多くは、労働基準法での「管理監督者」には、労働時間や休日等の規定の適用除外が認められていることを理由に挙げると思います。では、具体的に労働基準法のどの部分が適用除外になるのでしょうか。

「管理監督者」が適用除外されるものは、以下の通りです。
 ①法定労働時間(第32条)
 ②非常災害時の時間外・休日労働(第33条)
 ③休憩(第34条)
 ④休日(第35条)
 ⑤時間外・休日労働(第36条)
 ⑥時間外・休日労働の割増賃金に関する部分(第37条の一部)
 ⑦年少者の労働時間・休日(第60条)
 ⑧妊産婦の労働時間・休日(第66条)

 適用除外されるものすべてに共通しているのは、時間外労働や休日労働と「深夜業」(22時~翌5時)は分けて考えるという点です。管理監督者でも「深夜業」は一般の従業員と同様に扱うことは正しく理解しておきましょう。

 また、上記④について、まずは「休日」と「休暇」が異なる点は押さえておきましょう。
   休日:そもそも労働義務が課せられていない日
   休暇:労働義務が課せられているが免除されている日

 休日は、そもそも働く必要がない日です。毎週決まった曜日が休みの企業ではその曜日が、シフト制等であればシフトの入っていない日等が、休日にあたります。一方で休暇は、本当は働かなければならない日だが、申請等を行うことで働くことを免除される日です。休暇については、年次有給休暇や慶弔休暇がイメージしやすいと思います。本当は勤務日のはずですが、申請等を行うことで、その日は働かなくとも良くなります。
 さて、管理監督者が規定の適用除外になっているのは「休日」のみです。そのため、年次有給休暇の規定は一般の従業員と同じように適用されますし、就業規則等で慶弔休暇等の特別休暇が定められていれば、こちらも当然一般の従業員と同じように適用されます。

 さらに、上記⑧で注意していただきたいのは、適用除外は妊産婦や育児に関するすべての規定ではなく、あくまで労働基準法第66条の労働時間・休日の定めの部分のみという点です。第66条は「妊産婦が請求した場合には、法定労働時間超えの労働や休日労働をさせてはならない」との内容です(なお、労働基準法での妊産婦とは、「妊娠中及び産後1年を経過していない女性」を指します。)。例えば、産休に関する規定は第65条、育休に関する規定は労働基準法にはありませんので、管理監督者であっても産休や育休は適用除外にはなりません。
 ただ、育児介護休業法には、労働者から請求があった場合、時間外労働を制限しなければならない制度があります。管理監督者はそもそも時間外労働の規定が適用除外ですから、この制限も適用除外となり、時間外労働の制限は不要です。

管理職を含むすべての労働者の勤怠管理が必須

 確かに、管理監督者には、労働時間や休憩、休日の規定は適用されません。しかし、前述の通り、ここでの「時間外労働」には深夜業は含みませんし、「休日」に年次有給休暇は含みません。つまり、深夜業と年次有給休暇の規定は適用されたままです。深夜(22時~翌5時)に働けば深夜割増賃金の支払いは必要ですし、年次有給休暇も付与しなくてはなりません。当然、勤務時間を把握していなければ、深夜業の有無はわかりません。
また、年次有給休暇の年5日以上取得義務も対象ですので、年次有給休暇管理簿にて、付与日数や取得日数の管理は必須です。
管理監督者の勤怠管理を行わないと、正しく賃金支払いや休暇管理ができないというわけです。
 
 さらに、労働安全衛生法の改正により、2019年4月からは労働時間の客観的な把握が義務化されています。これは、労働者の長時間労働を防ぐことで健康を確保するための改正で、タイムカードやPCへのログイン・ログアウト時間等により、使用者に客観的な労働時間把握を求めたものです。
 管理監督者に限らず、具体的には、以下のいずれかの方法ですべての労働者の労働時間を把握することが求められています。
  ①使用者が、現場で確認することで記録すること
  ②タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間等で記録すること
 ①の使用者が全員の出退勤時間をその場で直接確認し正しく記録することは、多くの場合、非現実的だと思いますので、②の方法を用いることが標準的な方法になるでしょう。②の方法を用いる場合でも、これらの情報はあくまで基本情報とし、残業命令書や報告書等、労働時間を算出するための記録とも突き合わせ、労働時間を確認、記録する必要があります。
 また、上記いずれの方法も対応できない場合にのみ、自己申告による労働時間管理が認められています。その場合でも、実際の労働時間と申告した労働時間に乖離が生じないよう、次の点に注意しなければなりません。
 ・自己申告の方法や意図等を対象従業員に十分説明すること
 ・自己申告の労働時間と実際の労働時間が合致しているか、必要に応じて調査を実施すること
 ・適正な自己申告を阻害する目的で、時間外労働に上限を設定する等の措置を講じないこと

これらの記録は、労働者の長時間労働を防ぐ目的ですから、当然、管理監督者を含むすべての労働者が労働時間把握の対象となっています。

以上のことから、何時から何時まで勤務しているのか、いつ休んだのか、という勤怠情報は、役職に関わらず全労働者の分を把握する必要があることがおわかりいただけたと思います。

管理監督者かどうかは、役職ではなく実際の働き方で決まる

前述の通り、労働基準法では、管理監督者に当たる場合には、労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用除外になる、と定められていますが、そもそもこの「管理監督者」とは誰のことを指すのでしょうか。「管理監督者」という名称から、管理職(役職者)のことを指すと思われがちですが、管理監督者かどうかは、役職だけで決まるものではありません。
管理監督者とは、労働基準法が適用されない経営者と一体的な立場の人のことをいいます。経営者と同じように重要な職務と責任を有しているため、労働時間や休日の規制を超えて働くことが要請され得ることから、労働時間や休日のルールが適用除外とされているのです。そのため、役職者かどうかではなく、実際の働き方が経営者と一体的な立場であるかによって判断されます。
現在では、行政通達や裁判例を通して、主に以下の4点が管理監督者かどうかを判断する要件となっています。

①経営上の判断事項において、経営者と一体的な立場にあること
②重要な責任と権限を与えられていること
 前述の通り、管理監督者に様々な適用除外が認められている理由は「経営者と同じように重要な職務と責任を有している」ためです。そのため、与えられている裁量が少なく、上司に指示を仰がなければならない、部下の人事権を持っていない、予算の管理をしていない等の場合には、管理監督者とは呼べません。

③労働時間に自由裁量があり、通常の就業時間に厳格に拘束されていないこと
 こちらも経営者と同じように、日時を問わず経営上の判断や対応が求められる立場にある必要があります。そのため、遅刻早退を厳格に管理されているような場合は、管理監督者性は小さくなります。

④基本給や役職手当など、その地位にふさわしい待遇がなされていること
 重要な責任と権限にふさわしい待遇がされていることも、管理監督者の要件です。役職手当があるものの、その金額がみなし残業代と変わらないようなケースでは、その地位にふさわしい待遇とは言えません。
長時間労働になると時間単価は安くなります。管理監督者の労働時間が長時間になった結果、時間単価が一般の従業員より安くなれば、管理監督者として認められにくくなる可能性があります。具体的な金額ではなく、一般の従業員と比べて相応の待遇がされているか、が重要です。

いくら「店長」、「課長」、「部長」等の肩書がついていたとしても、実際は、上記4点において一労働者と変わらないのであれば、その方は、労働基準法における「管理監督者」ではありません。かつて、「名ばかり管理職」という用語が流行語に選ばれたことありました。記憶にある方もいるのではないでしょうか。
これらの要件は、具体的な数値が定められているわけではなく、総合的に見て管理監督者かどうかが判断されます。上記①~④の要件のうち、近年特に重視されているのが、「経営者と一体的な立場にあること」です。例えば、経営会議等に出席しているだけ、毎回上司に判断や決裁を仰がなければならない、上司の命令や会社の決定を部下に伝達するだけ、等の場合は、たとえ部下がいる場合であっても、経営者と一体的な立場とは言えません。裁量権や決裁権がどれくらいあるのか、経営方針等にどれだけ意見できるのか、といった内容がより強く見られる傾向です。
過去の判例・裁判例では、支店長やマネージャーであっても管理監督者ではないと認定されたものも多くあります。役職名だけで管理監督者かどうかを判断するのは非常に危険だということがわかります。

管理監督者ではないと判断された場合、当然、一般の従業員と同様、労働時間や休日などのルールが適用されます。その場合、当然、これまで支払われるはずだった分の時間外労働の割増賃金や休日労働の割増賃金の請求にも繋がります。未払賃金請求の時効はかつて2年でしたが、2020年4月以降に支払われるべきものからは5年(ただし当分の間は3年)に延長されました。「名ばかり管理職」が社内にいるということは、未払賃金を抱えながら企業経営をしていると言っても過言ではありません。
このように、これまで管理監督者と扱っていた人が「管理監督者ではない」と判断されてしまうと、企業が受けるダメージは非常に大きいです。

まずは、管理監督者も含め、すべての労働者の勤怠管理を行う必要があるということを認識しておきましょう。そして、現在、自社で管理監督者として扱っている方が「名ばかり管理職」になっていないか、管理監督者の範囲や働き方を改めて見直してみることをお勧めします。

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いろどり社会保険労務士事務所

内川 真彩美 特定社会保険労務士 / 両立支援コーディネーター

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