業務効率化だけでなく働きやすい職場にも繋がる「工数管理」を知ろう(後編)

働き方改革 / 工数管理
働き方改革の一環としても注目されている「工数管理」。前編では、工数管理と勤怠管理の違い、工数管理の第一歩である業務棚卸のポイントについて解説しました。しかし、「工数」の考え方を導入したところで、それを活かせなければ意味がありません。
そこで今回は後編として、工数管理が具体的にどんなメリットをもたらすのか、労務管理にどう活かせるのかを紹介していきます。
業務が可視化されることでチームの働き方改革を実現
<可視化だけでも業務効率化ができる>
誰がどのタイミングでどの業務をしているのかが見えるだけで、業務効率化に繋がる傾向にあります。このままだと業務に遅延が出る、逆に早めることができる、などが明確に見えるので、遅れている工程への人員増員やスケジュールの見直しなどがすぐにできます。つまり、全員の時間を効率的に使うことができるのです。また、工数の見える化は、個人の生産性を全員で把握することにもなるため、個人のモチベーションや生産性の向上にも繋がります。
<俗人化の防止と引継ぎの効率化ができる>
誰がどれだけの業務を割り当てられていてどんな状態かが共有できるため、俗人化の防止に繋がります。業務の状態がわかっていると、育児・介護・治療などとの両立もしやすくなったり、異動時の引継ぎもスムーズに行えます。
<働きやすさにも繋がる>
育児・介護・治療などとの両立に限らず、業務予定や現在の全体進捗が見えていると、休暇取得や残業の有無など、自分の働き方の調整もしやすくなります。このとき、休暇取得予定が共有できていれば、それを考慮したスケジュール管理や業務の組み換え、人員変更などもできるようになります。
<個人で日々の生産性を意識してもらえる>
勤怠も工数も、毎日データを入力することで精度が上がります。1週間分まとめての入力よりも、日々入力した方が精密な数字になることは、皆さんも想像に難くないことでしょう。
毎日の工数および勤怠の入力は、日々の自身の生産性を把握することにもなります。日々の労働時間と何にどれくらい時間を要したのかの把握により、自身の業務の見直しができ、個人レベルでの業務効率化も見込めます。
そのためには、現在行っている日々の勤怠入力とセットで工数入力もしてもらうという仕組み作りが必要です。工数管理をしたことのない会社では、社員からすれば面倒な業務が増えるだけになり、工数入力が定着しないこともあります。そのようなケースでは、工数管理がなぜ必要か、入力したデータがどう使われていくのかを、社員に前もってしっかりと説明すると良いでしょう。また、勤怠と工数をそれぞれ別のファイルやツールで入力してもらうのではなく、入力の負担が少しでも減るようなツールの選定や運用ができると、日々の工数入力も定着しやすいです。
工数管理の連携により会社の人材戦略にも繋がる
先ほどまでは、工数管理をするチームやプロジェクト、個人でのメリットを紹介しましたが、工数管理のデータを全社で活用することもできます。
例えば、毎回決まって特定の工程でスケジュールが押していることが数値に出ていれば、その工程に必要なスキルが社内で足りていないことがわかります。そうなれば、そのスキル習得のための研修実施や、そのスキルを持った人員の採用など、社内の経営戦略としての研修や採用に繋げられます。
また、工数管理により忙しいチームとそうでないチームが見えれば、部門を超えた配置転換なども検討できます。社内の人材の最適化により、全社での部門最適化や業務効率化が見込めます。個人の生産性もわかってくるので、今後の人員計画や育成計画も立てやすくなるかもしれません。
また、スケジュールのひっ迫などが可視化できると、36協定の時間数を超える社員がいないかを前もって把握できたり、長時間労働に伴う産業医面談などに繋げるなど、社員の健康管理に先手を打って対応することも可能です。
このように、工数管理は現場レベルの業務効率化だけでなく、会社全体の業務効率化や最適化にも繋げることができます。
工数管理を全社的に取り入れるのもよいですが、まずはテストケースとして、どこか1つのチームなど小さなところから取り入れてみるものよいでしょう。ミニマムに始めて試行錯誤しながら、徐々に全社に広げていくと、よりスムーズに工数管理を導入できます。
「働き方改革」という言葉はよく聞くが結局どうしていいかわからない、という声もよく耳にします。社内制度の整備などの全社的な対応からしていくことも良いですが、まずは現場レベルの働き方改革の一環として、工数管理を活用していただければと思います。