柔軟な働き方を実現する“フレックスタイム制”を知ろう

働き方改革 / ワークスタイル多様化
フレックスタイム制とは、労働者自身が出退勤時間と1日の労働時間を決められる制度です。昨今、柔軟な働き方の1つとしても取り上げられ、用語自体は多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。
しかし、その特徴からか、会社が労働時間を把握しなくてよい、残業代を払わなくてもよい、といった誤った情報もたまに耳にします。
今回は、フレックスタイム制の特徴を改めて確認していきましょう。
そもそもフレックスタイム制とは何か
フレックスタイム制とは、1日の労働時間を固定的に定めず、日々の出退勤時刻や労働時間を労働者が自由に決定できる制度です。
導入時に一定期間(以降「清算期間」)における総労働時間を決めることを求められますが、それが清算期間の所定労働時間となります。
出退勤時刻と1日の労働時間を自分で決められるだけですので、休憩時間、休日等のルールは通常の働き方と何ら変わりません。
また、フレックスタイム制は会社が勝手に導入できるものではなく、以下の手順が必要です。
・就業規則等に、始業及び終業の時刻を労働者の決定に委ねる旨を定める
・労使協定で以下の事項を定める(※印は任意)
– 対象となる労働者の範囲
– 清算期間(上限は3か月)
– 清算期間における総労働時間
– 標準となる1日の労働時間
– コアタイム※
– フレキシブルタイム※
・清算期間が1か月を超える場合には、労使協定を所轄同労基準監督署長へ届出
フレックスタイム制は、1日の労働時間も自分で決められ、労働時間が1日8時間、1週40時間の法定労働時間を超えても、超えた分が直ちに法定時間外労働の扱いとはなりません。
例えば、1日10時間働いても直ちに法定時間外労働扱いとはなりませんし、逆に4時間しか働かなくても、それだけで遅刻早退扱いとはなりません。
労働時間管理にはより一層の注意が必要
フレックスタイム制の法定時間外労働とは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた部分です。
法定労働時間の総枠とは、1週間の法定労働時間に、清算期間の暦日数を7で割ったものをかけた時間数です。
文字だけではわかりにくいので、例として、清算期間を1か月と定めた場合の時間数を提示します。
清算期間の暦日数 | 1か月の法定労働時間の総枠 |
31日 | 177.1時間 |
30日 | 171.4時間 |
29日 | 165.7時間 |
28日 | 160.0時間 |
例えば、清算期間を1か月と定めた場合、その1か月で働いた時間を足していき、31日ある月であれば177.1時間を超えた分が法定時間外労働、
つまり、割増賃金支払いの対象時間となるわけです。フレックスタイム制では、この法定労働時間の総枠を超えて働かせる場合に、36協定の締結と届出が必要です。
1日の労働時間が非固定のため、自分の今の総労働時間がわかりにくいのがフレックスタイム制の特徴でもあります。
清算期間の終了間際になって、このままだと36協定で定めた時間外労働の上限時間を超えてしまうとか、知らない間に超えてしまっていた、と慌てるケースも散見されます。
ここで注意したいのは、年次有給休暇の扱いです。フレックスタイム制では、年次有給休暇を使用した場合、制度導入時の労使協定で定めた「標準となる1日の労働時間」を働いたものとして、労働時間に加算されます。
例えば、標準となる1日の労働時間を8時間と定めた場合、年次有給休暇を1日取得すると、その日は働いていない(労働時間0時間)のではなく、8時間働いた扱いになるわけです。
固定時間制の働き方でたまに見る、時間外労働が多くなりすぎると労働時間の調整として年次有給休暇を取得する、ということがあまり意味を成さないことがおわかりいただけると思います。
そのため、上司や人事はもちろん、労働者自身も現在の総労働時間を確認できる仕組みを構築しましょう。また、フレックスタイム制の労働時間の考え方についても、労働者に定期的に周知したいものです。
働く時間帯に一定のルールを設けることも可能
また、労基法上の深夜(22時~翌5時)に働いた場合には、固定労働時間制の働き方と同様、深夜割増賃金の支払いが必要になります。
極端な例ではありますが、「自分は夜型だから」とか「昼間に予定があるから」と、勤務時刻を18時から24時とした方がいる場合には、22時から24時までの2時間には、深夜業に対する割増賃金の支払いが必要です。
そのため、コアタイム(必ず出勤しなければいけない時間帯)や、フレキシブルタイム(いつ出勤・退勤してもよい時間帯)を定めておくことも有効です。
例えば、出勤可能時間は5時から10時の間で決める、10時から15時までは必ず出勤、退勤は15時から22時までの間で決める、のようなものです。コアタイムを設けることで、チーム全員が必ず顔を合わせられる時間帯が作れるので、職場のコミュニケーションを活発化させることにも繋がります。
フレックスタイム制は、生活と仕事の両立を考えると非常に便利な制度です。育児、介護、治療等との両立にも使え、コロナ禍での時差出勤に役立ったという声も聞きます。一方、労働時間管理が複雑になる面も強いので、制度の導入の際には、適切な労働時間管理の仕組みも併せて構築しましょう。