業務効率化だけでなく働きやすい職場にも繋がる「工数管理」を知ろう(前編)

働き方改革 / 工数管理

近年、業務効率化や生産性向上に繋がると注目されているのが「工数管理」です。元々はシステム開発などの特定の業種にて導入されることが多かったですが、働き方改革の中で、業種・業界を問わず広まってきています。そのため、この工数管理をどのように行うのか、実際にどのような効果があるのかをまずは知っておきたいものです。
今回は前編として、工数管理と勤怠管理の違い、工数管理の第一歩である業務棚卸のポイントを解説していきます。

工数管理と勤怠管理の違いとは

「工数」とは、ある業務を終わらせるための業務量のことです。「その業務を終わらせるまでにかかる時間×人数」で算出され、この数値を管理することを「工数管理」と呼びます。要は、どの業務にどれだけかかるか・かかったかの管理です。予定工数と実績工数を定期的に照らし合わせることで、各メンバーの業務負荷や各工程にかかった工数が可視化されるため、業務効率化や人員の最適化などがより早い段階で行えます。また、実績工数を記録しておくことで、類似業務の工数見積もりが出しやすくなったり、その業務の振り返りにも使えます。
工数管理によりどの業務にどの程度の工数がかかっているかを把握できるため、業務効率化や生産性向上に繋がることが期待され、昨今の働き方改革の中でも業種・業界を問わず注目されています。

一方、「勤怠管理」とは働いた時間数や日数の管理を指します。いつ、何時から何時まで働いたのかを管理することが目的のため、働いた日時にどの業務をどれだけ実施したかは管理しません。

「勤怠管理」は労働基準法や労働安全衛生法でも定められている会社の義務ですが、「工数管理」は特段法律などで義務付けられてはいません。しかし、工数管理と勤怠管理のこの2つを組み合わせることで、業務効率化、生産性向上が見込めるのです。(詳細は、後編で解説します。)

工数管理の第一歩、業務の棚卸のポイントとは

 工数管理は、ただ実績だけを管理するのではなく、予定と実績を定期的に比較することで大きなメリットを発揮します。そのため、まずは業務の予定工数を出すことが重要です。そして、予定を出すための最初の一歩は、どれだけの業務があるのかを把握すること、つまり、業務の棚卸です。そこでここからは、棚卸の際のポイントを紹介していきます。

<現在の業務を洗い出す>
棚卸のために必要なことは、現在抱えている業務を洗い出すことです。まずは個人単位で現在抱えている業務を洗い出してもらうのがよいでしょう。ここで気をつけたいポイントは、全員で業務の粒度を揃えることです。例えば、Aさんが「請求書作成」「上長への確認依頼」「請求書発送」と3つ出した業務を、Bさんは「請求書発行」と1つの業務としてまとめてしまっていると、かかる工数に認識の相違が出てしまいます。そのため、まずは業務をできるだけ細かく出してもらい、それを後々取捨選択やグルーピングをしていく方が、全員の認識を合わせて進めることができます。事前に、大項目・中項目・小項目のように、ある程度一定の粒度で洗い出せるような枠組みを作り、それをもとに洗い出してもらうようにすると個人で洗い出す業務の粒度も揃いやすくなります。
 個人で業務を洗い出し終わったら、それを持ち寄って複数人で確認します。チームで工数管理をしたいのならチームメンバー全員で、部門を超えたプロジェクトで工数管理をしたいのならそのプロジェクトメンバー全員で認識を合わせていくのが良いでしょう。
 メンバー全員での確認時は、個人で棚卸した業務の名称や粒度の統一、抜け漏れや重複しているものがないかを検討します。それができたら業務ごとに、何人かかるのか、どのくらいの時間かかるか、前後関係のある業務は何かなどをまとめていきます。

<棚卸した業務を見直す>
棚卸した業務がまとまったら(あるいはまとめながら)、その中に実は不要な業務がないかなどを見直していきます。業務の要否だけでなく、人員の入れ替えや増減、業務順序の変更などで効率化できるものがあるか、システム化できるものがあるか、他部門と共通で実施することで工数削減ができるものがあるかなども検討すると良いでしょう。
業務の棚卸をしてみると、意外と多いのが打ち合わせの時間です。本当に必要な出席者は誰か、本当にこの打ち合わせが必要なのかなど、この機に見直すとそれだけでも業務効率化になることもあります。「業務の棚卸」というと実際に手を動かす業務が頭に浮かぶ方も多いと思いますが、打ち合わせの時間も忘れずに棚卸しましょう。

業務の棚卸ができて工数の見積もりが立てられれば、あとはその業務を実行し、実際にかかった工数を予定工数と定期的に照らし合わせながら、業務のスケジュールや人員配置の軌道修正をしていくことになります。
このような工数管理の運用が労務管理や会社の利益、働きやすい職場づくりにどのように繋がっていくかは、後編で解説していきます。