「休み方改革」のススメ。年次有給休暇の正しい運用とは?

働き方改革


昨今、働き方改革の流れで年次有給休暇の取得率向上を目標に掲げる企業が増えています。実際、わが国では年次有給休暇取得率が平均50%を下回っている状況ですので、この取得率を向上させることは労働時間の削減につながる重要なポイントと言えるでしょう。

年次有給休暇については人事労務管理の基本的事項ではありますが、運用する上で判断に迷う点も意外に多い制度です。今回はこの年次有給休暇の考え方と正しい運用方法についてご紹介したいと思います。

年次有給休暇とは

労働基準法第39条では、労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持を図ることと、ゆとりある生活の実現のため、という趣旨から毎年一定日数の有給休暇を与えることを規定しています。これが年次有給休暇です。

年次有給休暇(以下、基本的に「有給休暇」記載します)とは雇い入れの日から起算して6か月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して与えられるものですが、その対象は正社員だけではありませんので注意が必要です。契約社員、パートタイム労働者などの区分に関係なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して与えなければなりません。

また、有給休暇は、週の所定労働日数や週の所定労働時間が少ない労働者に対しても下表の通り、その日数に比例して付与されます。

<週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の付与日数>

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ところで、シフト勤務などで月により所定労働日数の変動が大きいために、どれだけの日数を比例付与すべきなのか判断が難しいケースもあると思います。この場合には、基準日において予定されている今後1年間の所定労働日数に応じた日数となりますが、その算出が難しい場合には、基準日直前の実績を考慮して所定労働日数を算出することとして差支えないとされています。よって、例えば、雇い入れの日から6か月経過後に付与される有給休暇の日数については、過去6か月の労働日数の実績を2倍したものを「1年間の所定労働日数」とみなして判断することで差し支えないということになります。ただし、あくまでこれは過去の通達による措置であり、原則論ではありませんので、不適切な付与とならないよう配慮が必要です。

時季変更権

使用者は有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならないとされていますが、一方で、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができるという、いわゆる時季変更権が認められています。では、では一体、どのような場合にこの時季変更権が認められるのでしょうか。これは、事業の内容や企業規模、労働者の担当業務の内容や業務の繁閑等、諸般の事情を考慮して総合的に判断する必要がありますが、単に日常的に業務が忙しいことや慢性的に人手が足りないという理由だけで認められるものではなく、「事業の正常な運営を妨げる場合」というのはかなり限定的なものであると考えておくべきでしょう。

出勤率の算定方法

前述の通り、有給休暇の発生要件は、「雇い入れの日から6か月間継続勤務していること」と「全労働日の8割以上を出勤していること」ですが、この「全労働日」とは労働の義務のある日のことを言います。つまり休日は含まれません。また、「継続勤務」とは在籍期間のことを意味し、勤務実態に即して判断されます。例えば、定年再雇用者の場合、再雇用後は新たに雇い入れたものではなく、継続勤務しているものとして、定年退職時点での有給休暇の残日数がそのまま引き継がれることになります。

では出勤率はどのように算出するのでしょうか。原則として以下の計算式により算出することになっています。

◆出勤率=出勤日数÷全労働日(暦日数-休日日数)

ただし、休日労働をした日や会社都合の休業日などは、原則として「全労働日」から除外する必要があります。また、業務上の怪我や病気で休んでいる期間、法律上の育児休業や介護休業を取得した期間などは、出勤したものとみなして取り扱う必要があります。

尚、慶弔休暇等の、会社が任意で決めている特別休暇の取得日について出勤したものとみなすかどうかについては、会社の定めによります。生理休暇についても同様です。

年次有給休暇の計画的付与

年次有給休暇の計画的付与とは、使用者と労働者の合意のもとで有給休暇の付与の時期をあらかじめ定め、計画的に付与できるという制度です。ただし、この場合であっても、付与される年次有給休暇のうち最低5日は労働者が自由に使えるようにしておかなければならず、計画的付与の対象にできるのは5日を超える部分のみとなります。

計画的付与を行うためには、事業場ごとに労使協定を締結する必要があります。この労使協定は労働基準監督署への届出は不要です。

計画的付与には、①事業場全体の休業による一斉付与 ②班別の交代制付与 ③年休付与計画表による個人別付与 の3種類がありますが、このうち事業場全体の休業による一斉付与の場合、その日に有給休暇の権利のない労働者を休業させた場合には休業手当(労働基準法第26条)を支払わなければなりません。

時間単位の年次有給休暇

年次有給休暇は1日単位で付与することが原則ですが、以下の事項について労使協定を結べば、5労働日分に限って年次有給休暇を1時間単位で付与することもできます。こちらも労使協定の労働基準監督署への届出は不要です。

①時間単位の年次有給休暇の対象労働者の範囲 ②時間単位の年次有給休暇の日数 ③時間単位の年次有給休暇1日の時間数 ④1時間以外の時間を単位とする場合はその時間数

③については、1日分の有給休暇に対応する時間数は、所定労働時間数をもとに定めますが、1時間未満を単位とすることはできないため、所定労働時間が7時間30分など、1時間未満の単位がある場合は、労働者の不利益とならないよう時間単位に切り上げることになり、7時間30分ではなく、8時間となることに注意が必要です。(つまり、8時間×5日=40時間分の時間単位年休になるという計算です。)

尚、時間単位の有給休暇は通常の有給休暇と同じように翌年度に限って繰り越すことができます。

時間単位の有給休暇は労働者にとっては利用しやすい制度ですが、一方で付与時間や残時間、繰越し時間について管理する人事労務担当者にとっては非常に煩雑な制度です。手計算やExcelでの管理では限界がありますので、勤怠管理システムを用いた管理を推奨します。勤怠管理システム上で時間単位の有給休暇の申請ができるなど、労働者にとってもスムーズな運用が実現できます。

年次有給休暇についての留意点

1.有給休暇の取得日について
年次有給休暇は、もともと労働日であった日について労働の免除を受けるものであるため、もともと労働しなくて良い日、つまり休日について有給休暇を使用することはできません。

2.退職直前の年次有給休暇の消化について 
労働者が退職願を提出し、会社が承認している中、残りの在籍期間の大半について有給休暇の取得を申し出てくるというのはよくあるケースだと思います。有給休暇は在籍中の労働者に平等に認められた権利なので、この場合でも、会社は退職することが確定しているからという理由で有給休暇の取得を拒否することはできません。しかし、有給休暇消化のために業務の引継ぎに支障が出る等の場合には調整してもらうことも想定されます。この場合にも、会社側が一方的に強制するのではなく、真摯な話し合いにより決めていくことが大切です。

3.年次有給休暇の買い上げの可否について 
有給休暇の主な目的は労働者の心身の疲労を回復させることにあるので、原則として有給休暇の買い上げの予約をして、これに基づいて有給休暇の日数を減らしたり、請求された日数を与えないことは労働基準法39条違反となります。尚、退職や消滅時効によって使用できずに残った有給休暇を買い上げることは事前の買い上げとは意味合いが異なりますので、必ずしも違法とは言えませんが、こうした買上げのしくみが有給休暇取得の抑制につながらないよう、注意が必要です。

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