働き方改革を後押しする助成金その1 ~罰則付き時間外労働の上限規制導入に備え、今から36協定の上限時間を見直しませんか?~

働き方改革


き方改革を後押しする助成金その1

~罰則付き時間外労働の上限規制導入に備え、今から36協定の上限時間を見直しませんか?~

平成29年度には職場意識改善助成金という名前で活用されていた助成金に対し予算が拡充され、平成30年度「時間外労働等改善助成金」として以下の5つの助成金が整備されました。

 

・時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)

・時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)

・時間外労働等改善助成金(職場意識改善コース)

・時間外労働等改善助成金(テレワークコース)

・時間外労働等改善助成金(団体推進コース)

これらは、中小企業・小規模事業者が時間外労働の上限規制等に円滑に対応するため、生産性を高めながら労働時間の短縮等に取り組む事業主に対して助成するものであり、中小企業における労働時間の設定の改善の促進を目的とした助成金です。

働き方改革関連法案が成立すれば、中小企業でも2020年4月より時間外労働の上限規制が始まる予定です。これらの助成金を上手に活用して、働き方改革を進められてはいかがでしょうか。

今回は、これらの助成金のうち「時間外労働上限設定コース」を取り上げてその概要をご紹介します。

 時間外労働等改善助成金(時間外労働上限設定コース)

このコースは、長時間労働の見直しのため、働く時間の短縮に取組む中小企業事業主を支援するものです。

取組みの実施にかかった費用の一部を支給するものですので、実際の取組みについて経費がかかっていることが前提となります。

<対象事業主>

平成28年度または平成29年度において「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準」に規定する限度時間(つまり、1か月45時間・年360時間等)を超える内容の時間外・休日労働に関する協定を締結している事業場がある中小企業事業主で、当該時間外労働および休日労働を複数月行った労働者(単月に複数名行った場合も可)がいること。

 

◆中小企業事業主の範囲

AまたはBの要件を満たす企業が中小企業になります。

業種

資本または出資額

常時使用する労働者数

小売業(飲食店を含む)

5,000万円以下

50名以下

サービス業

5,000万円以下

100名以下

卸売業

1億円以下

100名以下

その他の業種

3億円以下

300名以下

 

<支給対象となる取組み>

①労務管理担当者に対する研修

②労働者に対する研修、周知・啓発

③外部専門家によるコンサルティング

就業規則・労使協定等の作成・変更

⑤人材確保に向けた取組み

⑥労務管理用ソフトウェア、労務管理用機器等の導入・更新

⑦テレワーク用通信機器の導入・更新

⑧労働効率の増進に資する設備・機器等の導入・更新

 

<成果目標>

支給対象となる取組みは、以下の「成果目標」の達成を目指して実施する必要があります。

 

成果目標は、すべての対象事業場において、平成30年度または平成31年度内において有効な36協定について、時間外労働時間数等を短縮し、次の①から③のいずれかの範囲内で延長する労働時間数の上限を設定し、労働基準監督署へ届出を行うことです。

 

①時間外労働時間数で月45時間以下かつ、年間360時間以下に設定

②時間外労働時間数で月45時間を超え月60時間以下、かつ年間720時間以下に設定

③時間外労働時間数で月60時間を超え、時間外労働時間数および法定休日における労働時間数の合計で月80時間以下かつ、時間外労働時間数で年間720時間以下に設定

 

◆休日の増加による加算あり!

上記の成果目標に加えて、週休2日制の導入に向けて、4週当たり5日から8日以上の範囲内で休日を増加させることを成果目標に加えることができます。

 

<支給額>

(1)補助率

対象経費の合計額×3/4

 

ただし、常時使用する労働者数が30名以下でかつ、支給対象の取組み⑥~⑧までを実施する場合で、経費の合計額が30万円を超える場合はその4/5が補助されます。

 

(2)上限額

事業実施後に設定する時間外労働時間数等

事業実施前の設定時間数

現在の36協定において、月80時間を超えるなどの時間外労働時間数を設定し、その実績を有する事業場 現在の36協定において、月60時間を超えるなどの時間外労働時間数を設定し、その実績を有する事業場 現在の36協定において、月45時間を超えるなどの時間外労働時間数を設定し、その実績を有する事業場

成果目標①

150万円

100万円

50万円

成果目標②

100万円

50万円

成果目標③

50万円

 

(3)休日加算額

事業実施後

事業実施前

4週当たり4日 4週当たり5日 4週当たり6日 4週当たり7日
4週当たり8日

100万円

75万円

50万円

25万円

4週当たり7日

75万円

50万円

25万円

4週当たり6日

50万円

25万円

4週当たり5日

25万円

 

<具体例>

A社(企業全体の常時使用する労働者数20名)の本社では現在の36協定で、1か月90時間・年間810時間を限度時間とする特別条項を定めており、また休日については4週当たり4日と定めているとします。

 

これに対し、目標とする時間外労働時間の上限を1か月45時間・年間360時間に設定し、さらに休日を4週当たり8日に増やす目標を設定したすると、その成果目標達成のための取組みにかかった費用の3/4(※)が助成され、上限は150万円となります。また、休日加算については100万円の加算対象となります。

 

※A社は企業全体の労働者数が20名ですので、支給対象の取組み⑥~⑧までを実施する場合で、経費の合計が30万円を超える場合はその4/5が助成されます。

 

複数の取組みを行った場合には、その金額を合算して申請を行うことが可能です。

 

<申請の流れ>

①交付申請〔事業主〕

交付申請書の提出

交付申請書の受付・審査〔都道府県労働局〕

※平成30年12月3日(月)必着

交付・不交付の決定・通知〔都道府県労働局〕

通知の受理〔事業主〕

 

②事業実施〔事業主〕

事業実施(機器の購入、36協定の作成・変更・届出、研修の実施など)

③支給申請〔事業主〕

支給申請書の提出

支給申請書の受付・審査〔都道府県労働局〕

※事業実施期間が終了した日から1か月以内または平成31年2月15日(金)のいずれか早い日まで 必着

支給・不支給の決定・通知〔都道府県労働局〕

助成金の支給手続き

通知の受理〔事業主〕

助成金受け取り

 

<注意点>

●事業実施体制の整備のための措置として、労働時間や年次有給休暇などに関する事項について労使で話し合う機会を設け、また労使からの労働時間に関する個別の苦情、意見および要望を受け付ける担当者の選任などが必要になります。

●交付決定の前に事業にかかる発注・契約等を行った場合や、事業実施期間の終了後に取組みを実施した場合は、その経費について助成金の支給を受けることができませんので、助成金受給のためには順番をしっかり整理して取り組むことが必要です。

 

●支給対象事業主数は国の予算額に制約されていますので、12月3日前に受付を締め切る場合があり、注意が必要です。

 

●事業実施計画の作成にあたっては、必要な経費の算出根拠として見積書が必要となります。見積書は原則として複数とる必要があります。(相見積もり)

 

 

時間外労働の削減のために勤怠管理システムやコンサル、研修を導入したいがコストがかかるから、とためらっていた中小企業にとっては、この助成金の活用がその取組みへの後押しになるのではないでしょうか。

 

最後に、成果目標の時間になぜ、月【45・60・80】時間、年【360・720】時間という数字が出てきたのか。その根拠となる『時間外労働の上限規制』について、ご説明します。

改めて、その考え方をご確認ください。

 

 

罰則付き時間外労働の上限規制とは

 

これまで1か月45時間、かつ年360時間という時間外労働の限度基準が罰則の適用の無い大臣告示という位置付けであったのに対し、働き方改革関連法案成立後はこれが法律に格上げされ、罰則による強制力を持たせる予定です。

上限規制には<原則>と<特例>があります。これまでの36協定の基本条項・特別条項になぞらえて考えていただくと分かり易いと思います。

<原則>

労使協定の締結により、1週40時間、1日8時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度は、1か月45時間、かつ1年360時間とし、違反には以下に掲げる特例を除いて罰則を課す

 

<特例>

・特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働を年720時間(=月平均60時間)とする

・年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける

・この上限については、

2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれの月においても、休日労働を含んで80時間以内としなければならない

②単月では、休日労働を含んで100時間未満としなければならない

月45時間を超える月数は6か月(6回)までとしなければならない

 

①の平均時間の算出については、36協定の有効期間は関係ありません。有効期間を挟んで平均時間の算出がリセットされるわけではありませんので、注意が必要です。

※この上限規制については、自動車運転や建設の事業、医師や研究開発の職種については適用までに5年間の猶予を設けたり、別途基準時間を設ける予定となっています。

助成金を活用して働き方改革を推進しよう!

「働き方改革」と言っても何から手をつけたら良いのかわからない企業様は多いのでは無いでしょうか。

今回のブログで取り上げた助成金は、「時間外労働」にスポットを当てて紹介をしています。この機会に、まずは勤務・勤怠管理を見直して、働き方改革の一歩を踏み出してみませんか?

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