【労働基準監督署の対応も強化!】 罰則付き時間外労働の上限規制とは?
時間外労働
働き方改革の目玉として注目される時間外労働の上限規制。みなさまの企業では、法改正に向けて時間外労働の削減策を検討されていますか?
改正法の施行は大企業で2019年4月、中小企業で2020年4月を予定しています。これを聞くと、中には「まだまだだ」と考える方もいらっしゃるかも知れませんが、長時間労働には商慣習や職場慣行など様々な要因が関わっているのが実情です。それゆえ、数か月で時間外労働削減策の成果が出るほど一筋縄にはいかないものなのです。
時間外労働の上限規制とはどんな内容なのか?
今から正しく理解し、法令遵守のために、そして何より労働者の心身の健康のために、なるべく早めに時間外労働削減のための施策検討をスタートさせましょう。
長時間労働をめぐる実態
働き方改革実行計画によりますと、週の労働時間が49時間以上の労働者の割合は欧米諸国が10~15%程度であるのに対し、日本は21%を超えており、労働時間自体は徐々に減ってきてはいるものの依然として諸外国より高い状況が続いています。
このような状況に対し、政府は2020年には週労働時間が60時間以上の労働者の割合を5%以下にするという目標を掲げていますが、2016年データではまだ7.7%(30代男性では14.7%)となっており、実現までの道のりはそう簡単ではなさそうです。
長時間労働は労働者の心身の健康に影響を及ぼすことはいうまでもありませんが、多様な人材の活用という意味でも改善が必要な重要課題です。労働力人口が減少する中、これまでの男性正規労働者を中心とする採用戦略から脱皮し、女性や高齢者、障害者、外国人など、より多様な人材に目を向け、それらの方々の能力を最大限引き出すような多様な働き方の実現が求められています。その実現のためにも、同じ場所で長時間働くような実態は改めていかなければなりません。
このような課題を受け、働き方改革関連法案には、36協定でも超えることができない罰則付きの時間外労働の上限規制を導入するという内容が盛り込まれているのです。
時間外労働の上限規制とは?
1か月45時間、かつ年360時間というこれまでの時間外労働の限度基準が罰則の適用の無い大臣告示という位置付けであったのに対し、これが法律に格上げされ、罰則による強制力を持たせる予定です。
では、時間外労働の上限規制とは実際にどのようなものなのか、ここから具体的に見ていきましょう。
上限規制には<原則>と<特例>があります。これまでの36協定の基本条項・特別条項になぞらえて考えていただくと分かり易いと思います。
<原則>
労使協定の締結により、1週40時間、1日8時間を超えて労働可能となる時間外労働の限度は、1か月45時間、かつ1年360時間とし、違反には以下に掲げる特例を除いて罰則を課す
<特例>
・特例として、臨時的な特別の事情がある場合として、労使が合意して労使協定を結ぶ場合においても、上回ることができない時間外労働を年720時間(=月平均60時間)とする
・年720時間以内において、一時的に事務量が増加する場合について、最低限、上回ることのできない上限を設ける
・この上限については、
①2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均で、いずれの月においても、休日労働を含んで80時間以内としなければならない
②単月では、休日労働を含んで100時間未満としなければならない
③月45時間を超える月数は6か月(6回)までとしなければならない
①の平均時間の算出については、36協定の有効期間は関係ありません。有効期間を挟んで平均時間の算出がリセットされるわけではありませんので、注意が必要です。
ところで、この『80時間』や『100時間』という数字、どこから出てきたものかお分かりになりますか?もうお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、これは、「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準について」にある「発症前1か月間におおむね100時間または発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合」という基準(いわゆる過労死ライン)との整合性をとった数字になっているのです。
政府が掲げたこの上限規制導入の目的が労働者の健康確保だけでなく、『ワークライフバランス』にも触れていることからすると少々時間の設定が高すぎる感も否めませんが、一方で、元々長時間労働が常態化している企業においてはこの時間の徹底さえも厳しいというのが実情ではないでしょうか。
適用除外の取扱い
前述した時間外労働の上限規制については、全ての業種・職種に一律同じタイミングで導入されるわけではありません。
自動車運転や建設の事業、医師や研究開発の職種については適用までに5年間の猶予を設けたり、別途基準時間を設ける予定となっています。
それぞれの業種・職種に関する特例の内容については『働き方改革実行計画(工程表)』の38ページに詳細が記載されていますので、よろしければご参照ください。
▼『働き方改革実行計画(工程表)』 ※首相官邸HPより
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/pdf/20170328/02.pdf
労働基準監督署の対応が強化される
長時間労働に歯止めをかけるため、法改正を待たずに労働基準監督署の体制が強化されるという新聞記事が2月末に出ていたのをご存知でしょうか。
この報道によると、主に中小企業を対象に、違法な長時間労働の是正に向けた指導を強めていくようです。具体的には、労働基準監督署の窓口でルールを説明する指導員を2018年度に約5割増やし、さらに企業を直接訪れて自主点検を促す指導員も1割近く増員する予定とのことです。
指導員を増やすことで説明時間を十分確保し、残業時間の削減に向けた助言がしっかりとできるようにするのが狙いですが、一方で、人手不足が問題視されている労働基準監督官の負担を減らし、労働基準法違反が疑われる事業所への立ち入り調査に注力させる狙いもあるようです。
是正指導を受けることのないよう、適切な労働時間管理により長時間労働を抑制し、法令遵守を徹底していきましょう。
時間外労働を管理するなら、CC-BizMate
クラウド型勤怠管理システム CC-BizMateは、以下のような特徴があります。
- 労務リスクを軽減し、働き方改革を実現したい
- 集計作業や給与計算の効率化によるコスト削減を実現したい
- 導入コストが安い勤怠管理システムを探している
そうお考えであれば、ぜひCC-BizMateの導入をご検討ください。
参考:
参考: