残業代は、いくら払わないといけない?

時間外労働 / 残業代


残業代は、いくら払わないといけない?

長時間労働が問題となっている最近の日本ですが、残業代の支払いについて、正しく理解しているでしょうか。タイムカードで出勤を管理していたとしても、果たしてそれで大丈夫なのでしょうか。法律で決められている残業の定義、残業代の決まりについて説明します。

労働時間の管理、ちゃんとできていますか?

使用者は、労働時間の把握義務があります。労働時間を適正に管理し、時間外労働も含めた把握したうえでそこから給料を計算し、支払う義務があります。では、「労働時間」とはいったいどの時間を指しているのか、正確に理解できていますか? 詳しく見ていきましょう。

「労働時間」はいつからいつまで?

厚生労働省が定めたガイドランでは、労働時間とは「使用者の指揮命令下に置かれている時間」のことをいいます。つまり、拘束時間から休憩時間を除いた時間のことです。拘束時間には、「来客待ちの特に作業をしていない待機時間」、「作業前後の準備や後片付けの時間」、なども含まれます。また「休憩時間中の電話番」といった担当が決められているならば、担当の時間は拘束時間になるため、労働時間として数えなくてはいけません。文章などで決められておらず暗黙の了解や慣習となっていても、実質的に行われているものであれば、労働時間となります。

◆労働時間に含まれる判断事例

・    昼食休憩中に命じられて来客当番をする時間

・    貨物の積み込みのため、貨物自動車を待つ時間、バスやトラックの交代要員が助手席等で休息・仮眠を取っている時間

・    命じられて参加する会議・セミナーの時間

◆労働時間に含まれない判断事例

・    自由参加の教育訓練実施時間

・    一般健康診断やストレスチェック実施時間(※ 労働時間に含める方がよいとされています)

また、2カ所以上で労働をしている場合、同じ日であれば通算する必要があります。労働時間が所定労働時間(会社の決めた労働時間)を超えた場合に残業代を支払うのはもちろん、法定労働時間を超えた残業があった場合は時間外労働となり、割増賃金も発生します。

残業代っていくらなの?

さて、労働時間が所定労働時間や法定労働時間を超えていたときに払わなければならない残業代ですが、これは一体いくらになるのでしょうか。労働時間が所定労働時間内(1週間40時間、1日8時間以内)の場合は、「1時間当たりの通常労働時の賃金額×所定労働時間を超えた労働時間数」です。所定労働時間を超えた場合は、さらに時間外労働の割増賃金率を乗じて金額を計算します。

時間外労働の割増賃金率

労働基準法37条の4により、時間外労働には割増賃金が発生します。割増賃金率は2割5分以上です。他に、休日労働では3割5分以上、深夜労働(午後10時から朝5時)では2割5分以上、と決まっています。したがって、残業が深夜労働時間帯に及んだ場合は、時間外労働で2割5分、深夜労働で2割5分、合わせて5割以上の割増賃金を支払う義務があります。
時間外労働が翌日の休日に及んだ場合には、休日の0時からは休日労働の割増賃金率による支払い義務が生じるので、3割5分以上です。実際の金額については、「1時間当たりの通常労働時の賃金額×時間外労働時間数×割増率」です。

残業が1カ月に60時間を超えると大変!

特別に長い時間外労働が行われることがないようにと、1カ月に60時間を超える時間外労働については割増賃金の特例があります。通常2割5分以上の割増賃金ですが、1カ月60時間を超えるとその超えた分については、割増賃金率が5割以上(深夜時間帯にかかるときは、7割5分以上)となります。

割増賃金の代わりの、代替休暇の付与

このように、時間外労働は賃金の支払いも高くなってしまいます。しかしながら、残業は忙しい時期やタイミングによるものも多いでしょう。そこで、増賃金を支払う代わりに代替休暇を与えるという方法があります。
これは、年次有給休暇とは異なる有給の休暇、原則の割増賃金率2割5分以上分の割増賃金を計算し、それに相当する分の休暇を与えるものになります。
計算方法や、取得できる期間・時間などについて定めた労使協定の締結も必要です。
なお、原則を超える割増賃金率に相当する割増賃金は、必ず支払わなければいけませんし、労働者が代替休暇を取得しなかった場合には、通常の計算方法で計算した割増賃金の支払いが必要です。

残業の削減は双方にメリット

残業代については細かな規定があり、残業が多いと使用者が支払う賃金は増えていきます。無駄な残業をなくすためにもきちんとした労働管理、そして残業管理が大事です。

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参考:

労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準|厚生労働省