管理職も勤怠管理は必須!管理監督者のルールを正しく把握しよう
勤怠管理
「管理職には残業代が発生しないから、勤怠管理は必要ない」と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、2019年の法改正により、管理監督者であっても労働時間の把握をすることが義務であると明確化されました。本記事では、管理監督者のルールから企業が取るべき対応、勤怠管理が必要な理由やよくある誤解まで詳しく解説します。
管理監督者のルールと企業が取るべき対応
管理職の勤怠管理を正しく運用するには、まず「管理監督者」に関する法律上のルールを理解することが不可欠です。ルールを誤解したまま運用すると、企業にとって深刻なリスクを招く可能性があります。
「管理職」と「管理監督者」の違いを正しく理解する
一般的に「管理職」とは、課長や部長といった肩書を持ち、部下を指導・管理する立場にある従業員を指します。これは企業内での役職名であり、法律で定められた定義ではありません。
一方、「管理監督者」は労働基準法第41条第2号で規定される法律上の概念です。同条文では、管理監督者を「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるもの」と定めています。
つまり、社内で「管理職」と呼ばれていても、法律上の「管理監督者」に該当するとは限りません。管理監督者として認められるには、経営者と一体的な立場にあり、相応の待遇を受け、勤務時間に拘束されない働き方をしていることが求められます。
企業はこの違いを正確に把握し、自社の管理職が法律上の管理監督者に該当するかどうかを慎重に判断する必要があります。
管理監督者に該当するための4つの要件
厚生労働省は、管理監督者に該当するための基準として以下の4つの要件を示しています。これらすべてを満たして初めて、法律上の管理監督者として認められます。
- 重要な職務内容を有すること
- 経営者と一体的な責任と権限を有すること
- 勤務時間等の規制になじまない勤務態様であること
- 職務に相応しい待遇を受けていること
重要な職務内容を有すること
経営方針の決定や部署の統括に関与できる立場にあることが求められます。単に部下の業務を管理するだけでなく、会社全体の経営に影響を与える判断や意思決定に参加していることが重要です。
経営者と一体的な責任と権限を有すること
部下の人事評価や配置転換、採用・解雇の判断に関与できる権限を持っていることが必要です。さらに、予算配分や経費の決裁など、経営資源の配分についても一定の決定権を有していることが求められます。
形式的な決裁権ではなく、実質的に経営者と同様の指揮命令権を行使できる立場にあるかどうかが判断のポイントとなります。上司の承認がなければ何も決められない状態では、この要件を満たしているとはいえません。
勤務時間等の規制になじまない勤務態様であること
自らの裁量で出退勤時刻や休憩時間を決定できることが条件です。始業・終業時刻が厳格に定められていたり、遅刻や早退によって減給されたりする場合は、一般労働者と変わらない働き方をしていることになります。
管理監督者は、業務の必要性に応じて柔軟に勤務時間を調整できる立場にあることが前提です。タイムカードで厳密に管理され、所定労働時間の遵守を求められている場合は、この要件を満たさない可能性が高いといえます。
職務に相応しい待遇を受けていること
重要な職責を担うにふさわしい給与や賞与、その他の待遇が与えられていることが必要です。基本給や役職手当などを含めた総支給額が、部下である一般社員よりも十分に高い水準であることが求められます。
残業代が支給されないことで、結果的に部下よりも年収が低くなるような状況は、この要件を満たしていないと判断される可能性があります。管理監督者としての責任に見合った報酬が支払われているかどうかが重要な判断基準です。
「名ばかり管理職」による未払い残業代の遡及支払いリスク
上記4つの要件を満たさない場合、たとえ社内で管理職として扱われていても、法律上は一般労働者とみなされます。このような状態は「名ばかり管理職」と呼ばれ、企業にとって重大な法的リスクとなります。
名ばかり管理職に対しては、残業代や休日手当の支払い義務が発生します。さらに深刻なのは、未払い賃金の請求権には時効があり、現行法では5年間(当分の間は3年間)遡って請求できる点です。
たとえば、月40時間の残業を3年間続けていた管理職が名ばかり管理職と認定された場合、遡及して支払うべき残業代は数百万円に達することも珍しくありません。複数の従業員から同時に請求された場合、企業の財務に深刻な影響を与える可能性があります。
過去の判例でも、名ばかり管理職の扱いが違法と認定され、企業が多額の未払い残業代の支払いを命じられた事例が複数報告されています。飲食チェーンの店長が管理監督者に該当しないと判断され、約750万円の支払いを命じられたケースは広く知られています。
企業イメージや採用活動への悪影響
名ばかり管理職の問題は、金銭的なリスクにとどまりません。労務トラブルが表面化した場合、企業イメージや採用活動に深刻な悪影響を及ぼす可能性があります。
労働基準監督署から是正勧告を受けた場合や、訴訟に発展した場合、その情報がニュースやSNSで拡散されるリスクがあります。「従業員を大切にしない会社」というイメージが定着すれば、顧客離れや取引先からの信頼低下につながりかねません。
採用活動への影響も見逃せません。近年の求職者は、企業の労働環境や働き方に対する関心が高まっています。口コミサイトやSNSで「残業代が支払われない」「管理職になると損をする」といった評判が広まれば、優秀な人材の確保が困難になります。
特に若い世代は、ワークライフバランスやコンプライアンスを重視する傾向が強く、労務管理に問題のある企業は敬遠されがちです。人材獲得競争が激化する中、こうした評判は企業の成長を阻害する要因となり得ます。
企業は肩書だけで判断するのではなく、実態に基づいて管理監督者かどうかを慎重に見極め、適切な勤怠管理体制を構築することが求められます。
管理職にも勤怠管理が求められる3つの理由
管理監督者であれば残業代の支払い義務はありませんが、だからといって勤怠管理が不要というわけではありません。法改正や健康管理の観点から、管理職にも勤怠管理が求められるようになっています。
2019年の法改正で労働時間の把握が義務化された
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、労働安全衛生法が改正されました。この改正で、管理監督者を含むすべての労働者について「客観的な方法による労働時間の状況把握」が企業に義務付けられています。
具体的には、労働安全衛生法第66条の8の3において「事業者は労働者の労働時間の状況を把握しなければならない」と明記されました。従来は管理監督者について勤怠管理の義務がありませんでしたが、この改正により法的な義務となったのです。
客観的な方法とは、タイムカードやICカード、パソコンのログイン記録など、本人の申告に頼らない記録方法を指します。自己申告のみに依存した管理では、法律の要件を満たさない可能性があるため注意が必要です。
過重労働の防止と健康管理のため
勤怠管理の義務化には、管理職層の健康を守るという重要な目的があります。管理監督者は業務の裁量権が大きいため、本人も気づかないうちに長時間労働に陥りやすい傾向にあります。
厚生労働省の調査によると、管理職の多くは月間80時間以上の時間外・休日労働が常態化しており、これは全職種平均の約2倍に相当するとされています。過労死やメンタルヘルス不調のリスクが高い状態といえるでしょう。
勤怠管理によって労働時間を可視化することで、過重労働を早期に発見し、適切な対策を講じることが可能になります。従業員の健康を守ることは企業の責務であり、管理職も例外ではありません。
未払い残業代請求などの労務トラブルを防ぐため
勤怠管理を適切に行うことは、労務トラブルの予防にもつながります。前述のとおり、管理職として扱っていた従業員が実際には管理監督者の要件を満たしていなかった場合、未払い残業代を請求されるリスクがあります。
勤怠記録を正確に残しておけば、万が一トラブルが発生した際にも、労働時間の実態を客観的に証明できます。記録がなければ、従業員側の主張をそのまま認めざるを得ない状況に陥る可能性もあるのです。
また、勤怠記録は労働基準監督署の調査においても重要な資料となります。適切な記録を残しておくことで、法令遵守の姿勢を示すことができ、企業としての信頼性を高めることにもつながります。
管理職の勤怠管理でよくある誤解と実態
管理職の勤怠管理については、いまだに誤解が多く見られます。正しい知識を持ち、適切な対応を取ることが重要です。ここでは、特によくある誤解とその実態について解説します。
「残業代が出ないから打刻は不要」は誤り
「管理監督者には残業代や休日手当が発生しないから、タイムカードの打刻は必要ない」という認識は、現在では誤りです。確かに労働基準法上、管理監督者には労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。
しかし、2019年の労働安全衛生法改正により、残業代の支払い義務とは別に、労働時間の把握義務が課されるようになりました。これは残業代を計算するためではなく、従業員の健康管理を目的としたものです。
そのため、管理監督者であっても出退勤の記録は必要となります。タイムカードやICカード、勤怠管理システムなど、客観的な方法で労働時間を記録する体制を整えることが求められています。
深夜割増賃金や有給休暇は管理職にも適用される
管理監督者であっても、すべての労働基準法の規定が適用除外となるわけではありません。深夜労働(22時から翌5時まで)に対する割増賃金と、年次有給休暇に関する規定は、管理監督者にも適用されます。
深夜に勤務した場合、管理監督者であっても25%以上の割増賃金を支払う必要があります。この深夜割増賃金を正確に計算するためには、勤怠記録が不可欠です。
また、有給休暇についても、管理監督者は一般の労働者と同様に取得する権利を持っています。年10日以上の有給休暇が付与される従業員には、年5日の取得が義務付けられており、これは管理監督者も対象となります。
勤怠記録がないと労基法違反になる場合も
勤怠管理を怠ると、さまざまな法令違反につながる可能性があります。深夜労働の記録が残っていなければ、割増賃金の未払いという労働基準法違反に問われかねません。
また、労働安全衛生法で義務付けられている労働時間の把握を行っていない場合も、法令違反となります。労働基準監督署の調査で是正勧告を受けたり、悪質な場合は罰則の対象となったりする可能性もあるのです。
さらに、勤怠記録は法定で保存期間が定められています。労働基準法第109条により、タイムカードなどの労働関係に関する重要書類は5年間保存することが義務付けられています。現在は経過措置として3年間の保存も認められていますが、将来的には5年保存への完全移行が見込まれます。
管理職の勤怠管理は法令遵守と健康経営の第一歩
管理職の勤怠管理は、単なる事務作業ではなく、法令遵守と従業員の健康を守るための重要な取り組みです。2019年の法改正以降、その重要性はますます高まっています。
本記事のポイントを改めて整理します。
- 「管理職」と「管理監督者」は異なる概念であり、4つの要件を満たす必要がある
- 名ばかり管理職は未払い残業代の遡及支払いや企業イメージ低下のリスクがある
- 2019年の法改正により、管理監督者も労働時間の把握が義務化された
- 深夜割増賃金や有給休暇は管理監督者にも適用される
- 勤怠データは5年間の保存が義務付けられている
企業は最新の法改正情報を把握しながら、適切な勤怠管理体制を整備していくことが求められます。管理職の働き方を可視化し、健康で生産性の高い職場環境を実現していきましょう。



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