シフト制を採用している事業主様は必見!労務トラブルを防ぐ方法をご紹介します!
人事労務
コロナ禍を機に、シフト制で働く労働者と事業主とのトラブルが表面化しました。
というのも、緊急事態宣言が発出され、事業場を休業することになったときに、シフト制で働いている労働者が、シフトに組み入れられなかったために、雇用調整助成金の支給要件である労働者への休業手当が支払われない形となり、経済的に窮地に陥った方が続出したのです。
これについては、新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金という形で救済されましたが、休業手当以外にも労務トラブルのリスクがシフト制には潜んでいるのです。
今回は、シフト制を運用する上で注意すべき点をご紹介したいと思います。
最初が肝心?!従業員を雇用する場合は労働条件の明示を!
新たに従業員の方を雇用することになったときは、労働契約の締結時に「労働条件の明示」をする必要があります。
これは、労働基準法第15条に規定されており、労働条件の明示をしておかないと、従業員の方が労働基準監督署に相談した場合、行政指導の対象となることがあります。
具体的に何を明示するのかというと、契約期間(たとえば「3か月更新」など)や、「始業・終業の時刻」、「休日」などに関することです。
これらの明示は、雇用契約書でなくとも、労働条件通知書という形で従業員の方に交付することも可能です。
シフト制の場合、上記の労働条件を「シフトによる」とだけ労働条件通知書に記載するケースが見受けられますが、たとえば「A勤務・B勤務・C勤務」というようにパターン化しているようであれば、それぞれの始業時間と就業時間を明示するようにしましょう。
また、シフトを決定・変更する際のルールも盛り込んでおくと、労使の摩擦を防ぎやすくなります。
これは特に、シフトが決定した後で事業主側、従業員側の都合でシフトを変更しなければならない場合に効果があります。
もし、従業員の方から「明日休みます」と急に言われた場合、シフトを調整するのは大変なことです。
なので、シフト決定後に従業員側から変更する場合は、「○日前までに申し出ること」というようにルール化をしておくことが大切です。
これは事業主側にも言えることで、従業員の方に「急で申し訳ないけど、明日は来なくていいよ」ということになると、従業員の方にとって経済的な損失になりますし、労働基準法第26条で定める「休業手当」が必要になる可能性が高くなります。
この休業手当を支払わないと、こちらも行政指導の対象となり得るので注意が必要です。
しかし、上記のようなルールを敷いていても、突発的なシフトの変更は発生するものですので、できれば労使全体でシフトの共有しておき、柔軟に対応できる仕組みを作っておくとベターですね。
アルバイトにも年次有給休暇など正社員と同じ権利があります!
「ウチのアルバイトに有休はないよ」ということを聞くことがあります。
しかし、年次有給休暇を取得する権利は、正社員・アルバイトの区別なく、条件を満たせば法律上当然に発生します。
雇入れ後6か月を経過して8割以上の出勤率であれば、たとえ週1日のシフトである従業員の方も年次有給休暇を取得することができるのです。
また、労働時間が6時間を超える場合には、労働時間の途中に少なくとも45分の休憩を確保する必要があります(8時間を超えるときには1時間の休憩が必要です)。
注意が必要なのは、休憩時間とは、基本的に従業員の方が自由に使える時間のことであり、業務から解放されている必要があるので、休憩時間と言いつつも、何かあった時には対応しなければならない場合は、労働時間とみなされ、休憩時間とされている時間帯のすべてに賃金が発生します。
したがって、シフトを決める際には、何時から休憩時間とするのかも事前に決めておき、共有しておくことでトラブルを避けるようにしましょう。
あと、つい忘れてしまいがちなのが「残業時間の管理」です。
たとえば、忙しくてシフトで決定していた時間を延長して働いてもらった場合、どれだけの時間を超過したのかをきちんと管理しておく必要があります。
時間管理には、タイムカードなどを利用したり、従業員の方に直接記入してもらう方法などが考えられますが、その際に、1日の残業時間について15分未満は認めない、というのは、労働基準法第24条で規定されている全額払の原則に違反する可能性があります。
先日、大手の飲食店で5分未満の労働時間を切り捨てていたが、1分単位の勤怠管理に変更したというニュースがありましたが、それだけ労働時間の管理についてシビアに対応することが、リスクを回避するためには必要なことということになります。
このように、シフト制を運用しながら複雑な労務管理をどのように実現させるのか、今後すべての事業主の方に求められることになりそうですね。