パートタイマーの労働時間に関する法的ルールと留意点


総務省の労働力調査結果(令和4年労働力調査年報)によると、パートタイマー(以下、「パート」といいます。))を含む非正規社員は、いまや2,101万人となり、総労働人口の36.9%を占めるまでになっています。パート比率は各社様々だと思いますが、働き方が多様化してくる中で、パートの労務管理は非常に重要なものになっているのではないでしょうか。
今回は、パートの労務管理の中でも特に労働時間に焦点を当て、具体例を挙げながら解説をいたします。
 
 

労働時間に関する法的ルール

労働時間は休憩時間を除き1週40時間以内、1日8時間以内です。この時間を法定労働時間といいます。この1週40時間、1日8時間を超える時間は時間外労働(残業)となって、割増された時間外労働手当を支払う必要があります。この基準となるのが法定労働時間ということです。
 
労働時間には、もうひとつ、所定労働時間というものがあります。これは、パート各々ごとに定めた労働時間です。例えば、あるパートと「9時から15時まで勤務、休憩なし」と労働契約を結んだのであれば、所定労働時間は6時間となります。
休憩時間という言葉がでてきました。法律上、休憩は、労働時間が6時間を超える場合少なくとも45分、8時間を超える場合少なくとも1時間の休憩を与えなければなりません。
 
 

労働時間と休憩の関係

ここで、9時から15時で勤務するパートで考えてみましょう。
所定労働時間は、6時間。休憩はなし。6時間ぴったりの場合は、6時間を超えていないため、休憩を与えなくても法的に問題ありません。もちろん、お昼休憩で12時~13時を休憩とし、所定労働時間を5時間とすることも可能です。パートの多くは時給であることが多いため、「休憩時間はいらない。所定労働時間6時間がいい」ということもあるでしょう。その場合には、休憩なしのぶっ通し6時間勤務も可能です。
 
では、このパートが残業のため15時を超えて16時まで勤務した場合、休憩時間はどうしたらよいのでしょうか。
この場合、労働時間が7時間になるため、少なくとも45分の休憩を与えなければなりません。しかも休憩時間は、「労働時間の途中で与えなければならない」という法律上のルールもあります。すると、例えば、15時から15時45分まで休憩、残り15分が残業時間、という対応が必要となります。
さて、この結果ですが、みなさんどのように思いますか。会社もパートもどちらも「得」しない結果ではないでしょうか。このような状況を招かないための方法としては、次の2つがあります。
・そもそもパートには残業をさせない
・6時間を超えることが分かった早い段階で休憩時間を取ってもらう
 
付け加えておきますと、労働契約書では所定労働時間を6時間(例えば9時から15時)としておきながら、実態は9時から16時まで休憩なしで7時間働かせている、という場合には脱法行為となります。このような場合には、労働契約の内容を9時から16時としたうえで、(少なくとも)45分の休憩を与えることを当該パートと合意し直すことが必要です。
 
 

所定労働時間を超えて残業した場合

9時から12時勤務のパートが13時まで1時間残業を行った場合を考えてみます。この残業1時間について、通常の1時間分の時給でいいのか、それとも割増した時給を支払う必要があるのか、さてどちらでしょうか。
 
法的には、通常の時給で構いません。なぜなら割増賃金は法定労働時間を超えた時間につい
て発生するからです。この事例では、労働時間が9時から13時までの4時間であるため、割増賃金を支払う法的義務はありません。
 
ただし、ここで注意すべきことがあります。
労働条件通知書や労働契約書、あるいはパート用の就業規則などで、「所定労働時間を超えた場合には25%割増した残業代を支払う」旨の記載がある場合です。この場合では、所定労働時間(9時~12時)を超えた時間については割増賃金を支払う必要が出てきます。
所定労働時間を超えた時間はすべて割増賃金を支払うことに会社も認識し納得している場合には特に問題ありません。問題は、そのような認識もなく労働条件通知書等に書いている場合です。私も実務上そのような記載を多く見てきました。正社員用の就業規則をほぼそのままの内容でパート用として利用している会社は要注意です。
人事労務担当者の方は、今一度パートの労働条件通知書等を確認してみてください。そのうえで、会社の現状の対応と労働契約上の齟齬がある場合には、対応を検討する必要があるでしょう。
 
 

パートの労働時間、労働条件通知書にどのように記載するか

労働条件通知書等には、労働時間について、始業時刻と終業時刻を記載する必要があります。これはパートであっても正社員と同様です。しかしながら、正社員と違い、パートはそれこそ様々な勤務時間やシフトで働くことが多く、始業時刻と終業時刻を特定できないことが多いのではないでしょうか。そのため、「シフトによる」という記載だけになっている労働条件通知書が散見されます。
このような場合ですが、労働条件通知書等には次のように記載すればよいでしょう。こちらの内容は厚生労働省が作成したリーフレット『「シフト制」労働者の雇用管理を適切に行うための留意事項』を参考にしています。
 
①労働日ごとの始業・終業時刻を明記する
例)月曜日 9時~15時 金曜日13時~16時 土曜日9時~12時
 
②原則的な始業・終業時刻を記載した上で、労働契約の締結と同時に定める一定期間分のシフト表等を併せて労働者に交付する。
例)原則として9時~15時とし、その他シフトによる
 
具体的に労働日と時間が決まっている場合には、①となります。②のパターンは、月ごとにシフト表を作成している事業所等で利用できるでしょう。
 
この他、上記リーフレットでは労働契約時に、パートと下記の意向確認もしておくとよいとされています。
・シフトが入る可能性のある最大の日数や時間数
・シフトが入る目安の日数や時間数
・シフトが入る最低限の日数や時間数
 
このような内容もあわせて労働条件通知書等に記載しておくことで、シフト決めに関するトラブル防止に役に立つと思います。ぜひ参考にしてみて下さい。
 
 

始業前の着替え時間は労働時間か?

労働時間であれば労働の対価としての時給が発生することになります。そのため労働時間に当たるかどうかは非常に重要なポイントになります。
ここで、労働時間とは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」をいいます。この使用者による指揮命令は、明示でなくても黙示のものも含みます。黙示とは、はっきりは言わず、暗黙のうちに考えや意思を示すことといいます。例えば、パートが残業しているのを知っているのに注意しなかった、勤務日だけでは到底こなせないような業務量を与えていた、などです。逆に、自主的に早く来て仕事をしていた場合であっても、それを会社が期待していたわけではなかった場合、明示または黙示の指示はなかったといえます。
ただし、労働時間かどうかは、個別具体的事案に応じて判断することになるため注意が必要です。
 
それでは、飲食店でパートが作業着に着替える時間は労働時間といえるでしょうか。
当該店舗で、パートに対し、指定された作業着での業務遂行を命じていたのであれば、それは指揮命令下にあるといえるでしょう。
よって、着替えの時間は労働時間となります。
そのため、この飲食店はパートに対し、「出勤したらまずタイムカードを押して、それから着替えをして下さい」ということをしっかりと伝えておくべきです。そうしないと、着替え時間の労働時間性についてトラブルになる可能性があるからです。
 
 

労働時間の通算と割増賃金

パートの場合、複数のパート先を持っている方もいると思います。いわゆるパートの掛け持ちです。あるいは、他社で正社員として働き、自社では副業としてパート勤務、というパターンもあるでしょう。
では、このような働き方をしているパートの労働時間はどのように管理すればよいのでしょうか。
「他社での勤務のことなんて知らないよ」という声が聞こえてきそうです。しかしながら、法律上、労働時間については勤務先ごとの労働時間を通算する、とされています。そのため、あるパートが自社で4時間、他社で3時間働いた場合、その日の労働時間は7時間、ということになるのです。
 
問題となるのは、通算した結果、法定労働所間である1日8時間を超えた場合です。8時間を超えた時間は、時間外労働となり割増された残業代を支払わなければなりません。
この点、時間外労働の割増賃金の取扱いについては、厚生労働省の『副業・兼業の促進に関するガイドライン』に次のように示されています。
 

割増賃金の支払義務

各々の使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、他の使用者の事業場における所定労働時間・所定外労働時間についての労働者からの申告等により、
・ まず労働契約の締結の先後の順に所定労働時間を通算し、
・ 次に所定外労働の発生順に所定外労働時間を通算することによって、
それぞれの事業場での所定労働時間・所定外労働時間を通算した労働時間を把握し、その労働時間について、自らの事業場の労働時間制度における法定労働時間を超える部分のうち、自ら労働させた時間について、時間外労働の割増賃金(労基法第37条第1項)を支払う必要がある。
(厚生労働省『副業・兼業の促進に関するガイドライン』(P13)より引用、下線は筆者による)

 
 

労働時間を通算した場合の具体例

あるパートが、A社で先に契約、その後、副業としてB社と契約した場合、A社⇒B社の順で所定労働時間を計算します。
例えば、あるパートのある日の所定労働時間が、A社5時間、B社4時間とします。この場合、5時間+4時間=9時間となり、法定労働時間を1時間超えています。この1時間分の割増賃金は、労働契約が後であったB社が負担することになります。
 
次に、このパートのある日のシフトが、午前B社で3時間、午後A社で4時間とします。そして、B社で1時間残業が発生し、A社でも1時間残業が発生した場合、この日の労働時間は、全体で9時間(B社3時間+1時間、A社4時間+1時間)になります。法定労働時間を1時間超えていますが、残業が発生した順に集計していきますので、この日の1時間分の割増賃金はA社が負担します。
 
このように、副業による労働時間の通算は、複雑なものとなっていますが、実務的には、副業先の労働時間を会社が把握することが大切になってきます。副業先の労働時間の把握については、同ガイドラインを参考にすると、労働者からの申告が基本となります。
具体的には、パートに副業の有無や内容を確認する際、副業先の労働契約の締結日や期間、 副業先での所定労働日や所定労働時間、副業先での所定外労働の有無や見込み時間数なども届出内容に含めておくとよいでしょう。
 
副業については、パートに限らず、そもそも副業自体を認めるかどうか、といった課題もクリアにしておく必要があります。働き方が多様化し、国も副業を推進している以上、副業制度の整備は避けて通れないと考えます。その中で副業先の労働時間の把握の方法についても同ガイドラインを参考に決めておきましょう。
 
 

まとめ

今回は、パートに関する労務管理の中でも、労働時間に焦点を当てて解説しました。時給制で働くパートも多いからこそ、労働時間について関心が高いパートが多いことも事実です。企業は多様な働き方に対応するために、パートのシフトの組み方等様々に工夫されていることと思います。その中で誤った労働時間管理をしているとせっかくの努力が水の泡となります。本稿が今一度自社の労働時間管理を確認するきっかけになれば幸いです。
 
以上

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