出勤簿(タイムカード)の手書きは違法になる?手書きのデメリットや、おすすめの管理ツールも紹介

勤怠管理


はじめに
出勤簿やタイムカードは、企業が従業員の労働時間を適切に管理するための重要な記録です。従来、手書きで記録する方法も一般的でしたが、労働基準法の観点から「手書きの出勤簿は違法なのか?」という疑問を持つ人も多いでしょう。本記事では、手書きの出勤簿が法律上問題となるケース、手書き管理のデメリット、そして企業が導入すべきおすすめの勤怠管理ツールについて詳しく解説します。

第1章 出勤簿の手書きは違法なのか?法律の観点から解説

労働基準法における勤怠管理の義務

企業は、労働基準法第109条に基づき、従業員の労働時間を適切に記録し、3年間保管する義務があります。出勤簿やタイムカードは、この記録を正確に管理するための重要な書類です。手書きの出勤簿そのものが法律で明確に禁止されているわけではありません。しかし、企業側が適正な労働時間を管理できていないと判断されると、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があります。労働時間の改ざんや記録の不正確さが問題視されることが多いため、手書きでの管理には慎重な対応が求められます。

手書きの出勤簿が認められないケース

企業が手書きの出勤簿を使用している場合でも、以下のようなケースでは法的に問題となる可能性があります。
従業員の労働時間が正確に記録されていない
労働時間の改ざんや虚偽記載がある
手書きの記録が不明瞭で、労働時間の実態が確認できない
これらの問題が発覚した場合、労働基準監督署からの指導が入ることがあり、企業の信頼性にも関わるため注意が必要です。

電子的な勤怠管理の推奨

近年、厚生労働省も企業に対して電子的な勤怠管理の導入を推奨しています。ICカードやクラウド型の勤怠管理システムを活用することで、労働時間の客観的な記録が可能となり、労務トラブルを未然に防ぐことができます。企業は、単に出勤簿を記録するだけでなく、適切な方法で管理し、労働環境の透明性を高めることが求められています。

第2章 手書きの出勤簿が抱えるデメリットとリスク

労働時間の不正確な記録によるトラブル

手書きの出勤簿では、従業員が自己申告で出退勤時間を記入するため、正確な労働時間の把握が難しくなります。実際には業務上の指示があり定時前に出社しているのに「9:00出勤」と記載したり、残業をしているのに「18:00退勤」と書くことで、実態と記録に差が生じるケースがあります。このようなズレが蓄積すると、未払い残業や労働時間の過少申告につながり、企業側が法的責任を問われる可能性もあります。従業員による意図的な時間の改ざんも発生しやすく、本当は遅刻しているのに定時に出勤したように記入する、早退したのに通常通りの退勤時間を書くなどの不正が行われることもあります。企業側としては、これを防ぐためのチェック体制を整える必要がありますが、手書きの場合は確認作業が煩雑になりやすいのが現実です。

管理コストの増大と業務負担の増加

手書きの出勤簿を使用する場合、勤怠データの管理に多くの手間がかかります。総務や人事担当者は、毎月の給与計算時に全従業員の出勤簿を確認し、手入力でデータを集計する必要があります。この作業には時間がかかるうえ、転記ミスや計算ミスが発生しやすくなり、結果として給与計算の正確性を損なうリスクが高まります。労働基準監督署の調査や、労働時間に関するトラブルが発生した際には、過去の出勤簿を遡って確認する必要があります。

改ざんや紛失のリスク

従業員が勝手に過去の出勤簿を修正したり、管理者が労働時間を意図的に短縮するなど、不正が発生する可能性があります。長時間労働が問題視される企業では、意図的に残業時間を削減するための改ざんが行われるケースも報告されています。紙の記録は物理的に紛失するリスクがあり、火災や水害などの災害が発生した際には、すべての勤怠データが失われる恐れがあります。電子的な勤怠管理システムを導入すれば、データをクラウド上に保存できるため、紛失のリスクを回避できるというメリットがあります。企業のコンプライアンス強化の観点からも、手書き管理の見直しが求められています。

第3章 企業が適切な勤怠管理を行うためのポイント

客観的な勤怠管理の重要性

労働基準法では、企業に対して従業員の労働時間を適切に記録する義務が課されています。手書きの出勤簿は、従業員の自己申告に依存するため、記録してある時間の真偽が分かりにくい場面もあります。労働時間に関するトラブルが発生した際、企業側が適正な管理を行っていたことを証明できないと、未払い残業代の請求や是正勧告の対象となるリスクが高まります。この問題を回避するためには、打刻機能を備えた勤怠管理システムを活用し、客観的な記録を残すことが求められます。ICカードや生体認証を利用することで、出勤・退勤の時間を正確に記録し、従業員の労働実態を可視化することが可能です。

従業員の労働実態を把握する仕組みの構築

適切な勤怠管理を行うためには、従業員の労働実態を正確に把握することが不可欠です。手書きの出勤簿では、従業員がサービス残業を行っていたとしても、正確な記録を残すことが難しいため、労働時間の適正な管理が困難になります。勤怠管理システムを活用し、勤務時間と業務内容を記録できる仕組みを導入することが重要です。業務ごとのログを自動記録するツールを併用することで、従業員の実際の業務時間と出勤簿の記録を照合し、労働時間の適正な管理を行うことが可能になります。

勤怠管理ルールの明確化と社内への周知

企業が適正な勤怠管理を実施するためには、社内で統一されたルールを設け、それを従業員に周知徹底することが重要です。手書きの出勤簿を廃止する場合は、新たな勤怠管理システムの利用方法や運用ルールを明確にし、従業員が混乱しないように説明する必要があります。
新しい勤怠管理ツールを導入する際には、操作マニュアルを作成したり、研修を実施したりすることで、スムーズな移行を促すことができます。管理職向けの研修を行い、勤怠管理の重要性や労働基準法に関する知識を深めることで、適正な労務管理が徹底されるようになります。さらに、従業員が自身の勤務時間を適正に申告できる環境を整えることも重要です。サービス残業を防ぐために「実際の労働時間を正確に報告するように」といった指導を行うことで、より透明性の高い勤怠管理が実現できます。企業としては、従業員の自主的な労働時間管理を促しつつ、適正な労働環境の維持に努めることが求められます。

第4章 効率的な勤怠管理を実現するおすすめツール

クラウド型勤怠管理システムの活用

近年、多くの企業で導入が進んでいるのがクラウド型の勤怠管理システムです。クラウド型の勤怠管理システムは、インターネット環境があればどこからでも勤怠データを管理できるため、テレワークやフレックスタイム制を導入している企業にも適しています。出勤や退勤の打刻がリアルタイムで記録されるため、労働時間の改ざんや記録ミスを防ぐことが可能です。システムによっては、AIを活用して勤怠データを自動分析し、労働時間の偏りや長時間労働の兆候を検出できる機能もあります。これにより、労務リスクを事前に把握し、適切な対策を講じることができます。代表的なクラウド型勤怠管理システムとしては、「ジョブカン」「KING OF TIME」「SmartHR」などがあり、それぞれの企業の規模やニーズに応じて最適なシステムを選択することができます。

ICカード・生体認証を活用した打刻システム

企業の勤怠管理において、客観的な労働時間の記録を残すためには、ICカードや生体認証を利用した打刻システムが有効です。従業員が出勤時や退勤時にICカードを専用端末にかざすことで、正確な労働時間が自動的に記録されます。指紋認証や顔認証といった生体認証を活用することで、他人による不正打刻(いわゆる「なりすまし打刻」)を防ぐことができます。シフト勤務が多い業種では、ICカードや生体認証を利用することで、従業員の正確な出退勤管理が可能になります。

スマートフォン対応の勤怠管理アプリの導入

リモートワークの増加に伴い、スマートフォン対応の勤怠管理アプリを導入する企業も増えています。これにより、従業員はスマートフォンから出勤・退勤の打刻を行い、リアルタイムで勤務状況を記録できるようになります。営業職や外勤の多い職種では、オフィスに出社せずに仕事を開始するケースが多いため、スマートフォンから簡単に打刻できる仕組みは非常に便利です。また、GPS機能を利用することで、従業員がどこで勤務を開始したのかを記録できるため、不正打刻の防止にもつながります。代表的な勤怠管理アプリには、「勤怠管理 by freee」「タッチオンタイム」「KING OF TIME モバイル版」などがあり、企業の業務形態に応じて最適なツールを選択することが重要です。これらのツールを活用することで、従業員の勤怠管理を効率化し、手書きの出勤簿に頼る必要がなくなります。企業としては、デジタルツールを積極的に活用し、より正確で透明性の高い労働時間管理を実現することが求められます。

第5章 企業の労務管理に求められる今後の対策

勤怠管理のデジタル化と法令遵守の徹底

現代の企業に求められるのは、単なる労働時間の記録ではなく、法令を遵守しながら効率的な勤怠管理を行うことです。手書きの出勤簿は、企業のコンプライアンスリスクを高める要因となるため、デジタル化を推進し、正確な記録を残せる環境を整えることが不可欠です。近年は労働基準監督署による監査が強化されており、適切な労働時間管理が求められています。クラウド型勤怠管理システムやICカード、生体認証を活用することで、法的に有効な労働時間の記録を残すことができ、未払い残業や労働時間の改ざんといったリスクを低減できます。法改正にも対応できるシステムを導入することで、企業の労務管理をより確実なものにすることができます。2020年4月に施行された「改正労働基準法」では、時間外労働の上限規制が強化されており、企業が違反すると罰則を受ける可能性があります。このようなリスクを回避するためにも、最新の法令に対応した勤怠管理を実施することが重要です。

従業員の働き方に合わせた柔軟な管理体制の構築

テレワークやフレックスタイム制を導入する企業が増える中、従来の勤怠管理の方法では対応が難しくなっています。固定時間での出勤・退勤を前提とした手書きの出勤簿では、テレワーク中の労働時間を正確に把握することができません。このような状況に対応するためには、柔軟な勤務体系に適応できる勤怠管理ツールを導入し、従業員の労働実態を正確に把握する仕組みを構築することが求められます。リモートワークでは、業務開始・終了時の打刻だけでなく、業務内容の記録や生産性の可視化も重要になってきます。そのため、従業員の働き方に合わせたシステムを整備し、企業全体で適切な勤怠管理を実践することが必要です。管理者側が労働時間の状況をリアルタイムで把握できる仕組みを整えることで、長時間労働の防止や業務の適正な配分が可能になります。これにより、従業員の負担を軽減し、企業の生産性向上にもつながるでしょう。

従業員とのコミュニケーションを強化し、透明性の高い勤怠管理を実施

企業の勤怠管理が適切に機能するためには、従業員とのコミュニケーションが重要です。勤怠管理のデジタル化を進める際には、「なぜこのシステムを導入するのか」「どのようなメリットがあるのか」をしっかりと説明し、従業員の理解を得ることが不可欠です。手書きの出勤簿からデジタル管理へ移行する際には、従業員の不安を払拭するために、事前に研修を実施したり、FAQを用意したりすることでスムーズな移行を促せます。定期的に労働時間に関するフィードバックを行い、従業員が適正な時間管理を意識する環境を整えることも重要です。さらに、労働時間の記録を一方的に管理するのではなく、従業員の働き方に対する意見を取り入れながら、適切な運用ルールを整備することも効果的です。勤怠管理システムに「自己申告修正機能」を設け、記録ミスがあった場合に従業員自身が修正を申請できる仕組みを導入すれば、より透明性の高い管理が実現できます。

まとめ
出勤簿(タイムカード)の手書き管理は、法律上違法とはされていないものの、多くのリスクを伴います。労働時間の改ざんや記録ミスが発生しやすく、未払い残業のトラブルにつながる可能性があります。そのため、企業は適切な勤怠管理を行うために、デジタルツールを活用し、労働時間の客観的な記録を残すことが求められます。クラウド型勤怠管理システムやICカード、生体認証を活用することで、従業員の出退勤時間を正確に記録し、労務リスクを最小限に抑えることができます。
リモートワークやフレックスタイム制の普及に伴い、柔軟な管理体制を整えることが今後の企業経営において重要な課題となります。企業は、勤怠管理を単なる労働時間の記録としてではなく、従業員の働きやすさや生産性向上を支える仕組みとして位置付けるべきです。適切な勤怠管理の導入により、従業員の負担を減らしながら、企業の成長と持続的な発展を実現していきましょう。

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監修者名:社会保険労務士・行政書士オフィスウィング 板羽愛由実