勤務時間の正しい計算方法

勤怠管理


勤務時間の正しい計算方法

勤務時間は就業規則で定められていますが、残業や休日出勤、有給休暇や早退、遅刻などがあります。1日の勤務時間を手書きやタイムカードで記録している場合でも、給料の単位でもある1カ月の勤務時間となった場合はどのように計算するのでしょうか。切捨て、切上げの方法、10分、1分単位などの細かい計算方法について見ていきます。

勤務時間はどこからどこまで?

勤務時間とは、労働者がその使用者の指揮命令下に置かれた時間をいいます。拘束されている時間から休憩時間を除いた、「労働した時間」をすべて含みます。ここには実際に稼働している時間はもちろんのことですが、手待ち時間や準備時間も含まれます。手待ち時間とは、休憩時間とは違い、完全には使用者の指揮命令から解放されていない時間のことをいいます。来客待ちの時間や、電話当番のために社内にいる時間などです。また慣習も含めて強制参加となっている掃除当番や早朝会議なども労働した時間として勤務時間に含みます。

社内で仕事をする人については細かく時間を計算することが可能ですが、直行直帰のある営業の仕事や、状況に応じて変化のある研究開発などについては、なかなか同じようにはいきません。
この場合には、みなし労働時間制といって、実際の労働時間にかかわらず一定の時間を労働したことにする制度もあります。これは労使協定の定めが必要となりますが、この制度を採用している場合にはみなし労働時間が勤務時間となるのです。

勤務時間は、労働を提供した時間として、給与の金額に関わる重大な問題ですので、正確な時間が求められます。残業があればその分の給料も必要ですし、労働基準法による法定労働時間を超える労働については、時間外労働として割増賃金を払う必要もあります。

残業時間の計算

就業規則に定められた時間を超える時間は、残業時間です。残業時間については、その分の別途給料が発生しますので、通常時間とは分けて計算しなくてはいけません。1時間遅刻したため1時間延長した、などという場合は残業にはなりません。残業時間はたとえ1分であっても、正当な「労働の対価」であるため、30分未満の端数切り捨てなどの処理は認めらません。これは労働基準法第24条における「賃金全額払いの原則」の趣旨に基づくもので、1分単位で正確に計算し、支給することが必要です。

ただし、1カ月の累計の類型労働時間については、端数処理することが認められています。「1カ月における時間外労働等の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合において、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる方法」は、可能です。理由としては、この処理が常に労働者の不利となるものではなく、事務処理の簡便を目的としていることが挙げられます。これは1カ月単位のことのみであり、1日単位での切り上げ切り下げを認められていません。

遅刻・早退・欠勤の処理と、減額制度

遅刻・早退・欠勤があった場合において、その部分の給料を控除することは、問題ありません。また、遅刻した分を通常の就業時刻を超えて就業する場合には、その部分は残業にはあたりません。ただし、遅刻・早退の時間分の給料額を超える減額は認められません。30分単位で計算するなどして5分の遅刻で30分の賃金カットなどという処理は、賃金の全額払いの原則に反してしまいます。労働した分はすべて支払いの対象です。

企業は、企業秩序を維持するためにも、就業規則において減給制度の定めを置くことができます。当然、根拠のない制裁制度は認められませんので、あらかじめ減給の事由を定めておく必要があります。また、減給の制裁については労働した分の賃金から一定額を減額するものとなるので、その額が高額になってしまうと労働者の生活を脅かすおそれがあるため、次のような制限額が決められています。

  • 1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。
  • 減額総額が賃金総額の10分の1を超えてはならない。

この制限を超える就業規則の定めは、無効となります。減額総額が賃金総額の10分の1を超える場合において、その超える減額分を次の給料の計算へ繰り越すといった措置は可能です。

勤務時間の管理方法

給料は勤務時間の対価です。固定給であっても残業や欠勤分についての計算が必要です。時給制のアルバイトなどがいる場合は、日々の勤務時間を特に正確に計算・管理する必要があります。しかし、管理者がすべての労働者の勤務状況を確認するのは容易ではありません。勤務時間の管理方法として利用されている代表的なものを紹介します。

  • 出勤管理表

出勤退勤、休憩時間を個々に記録して管理者に提出する方法です。自分で記録しますので、直行直帰の場合でも正確な時間を計算できます。管理者には申告に間違いがないか確認する手間や、集計作業をする必要があります。

  • タイムカード

出勤・退勤を打刻する方法です。自動的に残業時間、集計を行ってくれます。直行直帰などの仕事に対応できないため、その際は別の記録方法と併用する必要もあります。

  • Excel

手書きの方法とは違って、集計作業などが簡単に出来ます。出勤・退勤・勤務時間・休憩時間については日々の入力が必要です。外出の際など入力作業が即時にできない可能性があります。

  • 勤怠システム

インターネットを通じて出勤・退勤時刻などの入力を行います。社内にいなくても管理ができます。システムに導入コストがかかります。

 

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正確な勤務時間管理をすること

管理者においては、労働者の正確な勤務時間管理をすることで仕事の状況把握をすることができます。適切な人員配置ができているのか、経営の見直しのヒントにもなるのです。また、労働者にとっても、働いた分の正確な勤務時間管理がされているというのはモチベーションアップにつながります。社員やアルバイトのように就業体系が違う人たちにはそれぞれにあわせた集計が必要となりますし、勤務時間から給料を計算することになりますので、正確さはもちろん迅速さも求められていきます。管理の方法についてはさまざまな方法がありますので、自社の状況に合わせた方法を取れるよう、見直しをしてみてはいかがでしょうか。

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