【平成30年7月6日公布】働き方改革関連法のポイントを確認 その1
働き方改革
目次
平成30年7月6日公布 働き方改革関連法のポイントを確認①
働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)が、平成30年6月29日に可決成立、同7月6日に公布されました。
今回から3回に分けて、成立した働き方改革関連法のポイントや留意点を確認していきます。まだ詳細が出ていない部分も多いですが、おおまかな内容をつかんでいたければと思います。
改正の柱は次の2点です。
Ⅰ.労働時間法制の見直し
【見直しの目的】
働き過ぎを防ぐことで、働く人々の健康を守り、多様な「ワーク・ライフ・バランス」を実現すること
【見直しの内容】
1.時間外労働の上限規制
2.月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の中小企業への適用
3.企業への年5日間の年次有給休暇の取得の義務付け
4.フレックスタイム制の清算期間の上限延長
5.高度プロフェッショナル制度の創設
6.労働時間の客観的把握の義務化
7.産業医・産業保健機能の強化
8.勤務間インターバル制度の導入促進
Ⅱ.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
【見直しの目的】
同一企業内における正規雇用と非正規雇用の間にある不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても「納得」できるようにすること
【見直しの内容】
1.不合理な待遇差をなくすための規定の整備
2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化
3.行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備
尚、大企業か中小企業かにより施行日が異なるものがあります。
中小企業は以下の条件に該当する企業になりますので、ご確認ください。
業種 |
|
|
小売業 |
5000万円以下 または 50人以下 | |
サービス業 |
5000万円以下 または 100人以下 | |
卸売業 |
1億円以下 または 100人以下 | |
その他 |
3億円以下 または 300人以下 |
1.時間外労働の上限規制
時間外・休日労働に関する協定届(36協定)について、従来は強制力のない厚生労働大臣の告示という形で時間外労働限度基準が定められていましたが、これが労働基準法の本則に格上げされ、規制が強化されることになります。
改正法が施行された後は、時間外労働の上限を協定すべき期間は、【1日・1か月・1年】の3種類となります。
このうち、【1か月・1年】については以下の通り時間外労働(休日労働を除く)の上限が法定化されました。
1か月の上限:45時間
1年の上限 :360時間
上記の限度を超える可能性がある事業場では、36協定に特別条項を付加することができます。
特別条項では、以下の事項を定めます。
・1か月に延長できる時間外労働(休日労働の時間を含む)
・1年に延長できる時間外労働(休日労働の時間は含まない)
・特別条項を発動する月数
そして、この特別条項を付加する場合でも、以下が最大限度となります。
・1か月の時間外労働(休日労働の時間を含む)
→100時間未満
・2か月ないし6か月のそれぞれの時間外労働の平均時間(休日労働の時間を含む)
→80時間以内
・1年の時間外労働(休日労働の時間は含まない)
→720時間以内
・原則である月45時間を超えることができるのは、年間6か月まで
上記の「1か月の時間外労働100時間未満」および「2か月ないし6か月のそれぞれの時間外労働の平均時間80時間以内」に違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰則が科されることになります。
この上限規制は、大企業で2019年4月1日、中小企業では2020年4月1日から施行されます。(労働基準法)
ただし、この上限規制には適用を猶予・除外する事業・業務があります。
自動車運転の業務・建設事業・医師・鹿児島県および沖縄県における砂糖製造業については、改正法施行後5年後に、上限規制を適用することになります。また、新技術・新商品等の研究開発業務については時間外労働の上限規制は適用しません。ただし、長時間労働発生時の医師の面接指導や代替休暇の付与等の健康確保措置を設けることが必要です。
2.月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の中小企業への適用
2010年4月1日施行の改正労働基準法では、1か月について60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働について50%以上の率で計算した割増賃金を支払うことが規定されました。
しかし、中小企業に対しては、これまで猶予措置が図られてきました。
今回の法改正により、その猶予措置が撤廃され、中小企業についても1か月60時間を超える時間外労働をした場合には、その超えた時間に対して通常の労働時間の賃金の計算額の50%以上の率で計算した割増賃金を支払うことになりました。
この中小企業に対する猶予措置の廃止は2023年4月1日から施行されます。(労働基準法附則138条の削除)
3.企業への年5日間の年次有給休暇の取得の義務付け
これまで、年次有給休暇については、労働者が自ら申し出て取得の時季を指定するか、計画的付与の規定に基づき、労使協定により取得の時季を指定するか、いずれかでしか取得をすることができませんでした。しかし、自ら休暇取得の申出がしにくく、我が国の年次有給休暇の取得率は5割に達しないなど、なかなか年次有給休暇の取得率が上がらないことから、今回の法改正により、新たに、使用者が労働者の希望を聴き、希望を踏まえて取得の時季を指定し、年5日は労働者に年次有給休暇を取得させなければならないこととなりました。
具体的な内容は以下の通りです。
・対象者は、年次有給休暇の付与日数が10日以上である労働者とする
・使用者は、上記労働者を対象として、年5日の年次有給休暇について時季指定をしなければならない
・ただし、「労働者の時季指定」「計画的付与」により年次有給休暇の時期が指定されたときは、その日数の合計を5日から差し引いた日数を時季指定する
・「労働者の時季指定」「計画的付与」により指定された日数が5日以上に達したときは、使用者は時季指定の義務から解放される
この規定に違反した場合には、30万円以下の罰金が科されます。
5日間の年次有給休暇取得の義務付けは、2019年4月1日から施行されます。(労働基準法)
4.フレックスタイム制の清算期間の上限延長
これまで、フレックスタイム制の清算期間の上限は1か月とされてきましたが、法改正により上限が3か月に延長されました。
清算期間を3か月にすることにより、例えば、6月に法定労働時間を超えて働いた時間分を8月の休んだ分に振り替えることができるようになります。このケースでは、3か月の平均で法定労働時間以内にすれば6月の分の割増賃金の支払はありませんし、8月に所定労働時間働いていなかった場合も6月に働いた時間分があるので、現行のように欠勤扱いとはなりません。
尚、このように1か月を超える期間を清算期間と定めた場合は、当該清算期間をその開始の日以後1か月ごとに区分した各期間ごとに、当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内で労働させることができます。
フレックスタイム制の労使協定は清算期間が1か月以内なら労働基準監督署への届出は不要ですが、1か月超3か月以内の労使協定については、届出が必要になります。
「清算期間をその開始の日以後1か月ごとに区分した各期間ごとに、当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えない範囲内で労働させることができる」という規定に違反した場合には30万円以下の罰金が科されます。
このフレックスタイム制の清算期間の上限延長は、2019年4月1日より施行されます。(労働基準法)
今回は「労働時間法制の見直し」の中の4つを取り上げました。次回も、働き方改革関連法のポイントを解説します。
参考:
厚生労働省「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて~」