テレワークの勤怠管理とは|管理方法や気をつけるポイント

働き方改革 / テレワーク


はじめに
テレワークが一般的になり、従業員の勤怠管理に課題を感じている企業もあります。従来のオフィス勤務では、出勤・退勤する姿を上司が直接確認することができました。しかし、リモートワークだと実際に従業員が始業したり終業する場面を確認できないこともあり、適切な労働時間の管理についての悩みを抱えることがあります。従業員が実際にどの時間帯に働いてるのか、過重労働になっていないかをきちんと把握することは企業にとっても従業員にとっても重要です。

リモートワークでは、勤怠管理のルールを明確にし、適切な管理ツールを活用することで、労働時間の可視化と適正な業務配分が可能になります。適切な勤怠管理が行われていないと、長時間労働や賃金未払いや反対に過払いにつながる恐れがあります。本記事では、テレワークにおける勤怠管理の基本から、具体的な管理方法、システムの活用、導入時の注意点まで詳しく解説します。

第1章 テレワークにおける勤怠管理の重要性

在宅勤務の普及と管理の課題

テレワークの普及により、企業は新たな勤怠管理の方法を模索する必要に迫られています。在宅勤務やリモートワークでは、オフィスのように直接労働時間を確認することができないため、従業員が適切に勤務しているかを把握する仕組みが求められます。特に、労働時間の可視化や労務管理の適正化は、企業の健全な運営にとって欠かせない要素となります。
テレワークにおける勤怠管理にはいくつかの具体的な課題が存在します。

  1. 労働時間の正確な把握の難しさ
    在宅勤務では、出勤・休憩・退勤の概念が曖昧になりがちであり、労働時間の正確な把握が難しくなります。たとえば、業務の合間に私的な用事を済ませるケースや、就業時間外に業務を続けてしまうケースが発生しやすく、実際の労働時間と申告された時間に差が生じる可能性があります。
  2. 長時間労働やサービス残業のリスク
    オフィス勤務と異なり、上司や同僚がすぐそばにいないため、従業員が自らの労働時間を適切に管理する必要があります。その結果、勤務時間の境界が曖昧になり、長時間労働やサービス残業のリスクが高まることが懸念されます。特に、業務が終わらないことによる「ついでの作業」や、上司からの期待に応えるために自発的に働いてしまうケースが見られます。
  3. 勤務態度や業務進捗の評価の難しさ
    テレワークでは、従業員の勤務状況を直接確認できないため、適切な評価が難しくなります。オフィス勤務であれば、業務への取り組み方やチームメンバーとのコミュニケーションを直接観察できますが、在宅勤務では成果物やオンラインでの報告に依存せざるを得ません。そのため、上司と部下の間で評価基準が不明瞭になり、従業員のモチベーション低下につながる可能性があります。
  4. 勤怠管理システムの導入負担
    テレワークの勤怠管理を適切に行うためには、クラウド型勤怠管理システムの導入が必要となる場合があります。しかし、新たなシステムを導入するにはコストがかかるだけでなく、従業員にとって操作が煩雑であると適切に運用されないリスクもあります。特に、中小企業ではコスト面やITリテラシーの問題から、導入が進まないケースも少なくありません。
  5. メンタルヘルスや働きすぎの管理
    在宅勤務では、業務の合間に休憩を取るタイミングが分かりにくくなり、気づかぬうちに働きすぎてしまうことがあります。また、孤独感やチームとの一体感の欠如によって、ストレスやモチベーションの低下が発生しやすくなります。企業側は、従業員のメンタルヘルスを考慮した働き方の支援策を講じる必要があります。

従業員の労働時間の可視化が必要な理由

在宅勤務が普及すると、働く時間が柔軟になり、従業員のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。しかし、その反面で、「仕事の開始時間が曖昧になる」「休憩を適切に取らない」「残業時間が増えてしまう」といった課題も発生します。これらの問題を防ぐためには、企業が適切な管理を行うことが重要です。また、労働時間の可視化が求められる理由として、公正な評価の実施があります。テレワークでは、目の前で働いている姿が見えないため、勤務時間や成果を正確に把握することが難しくなります。適切な管理がなされていないと、働いている時間が長い従業員が評価されるなどの不公平が生じる可能性があります。そのため、労働時間と成果を適切に測る仕組みを導入することが不可欠です。

適切な管理を行わないリスク

勤怠管理が不十分だと、企業や従業員にとってさまざまなリスクが発生します。例えば、適正な労働時間が管理されていないと、長時間労働が常態化し、従業員の健康を損なう恐れがあります。また、未払い残業の問題が発生し、企業が法的なリスクを抱える可能性もあります。こうしたリスクを回避するためにも、テレワークの勤怠管理は慎重に進める必要があります。
テレワークにおける勤怠管理の重要性は、単なる労働時間の把握にとどまりません。従業員のモチベーション向上や業務の効率化、健康管理、労働環境の整備など、企業全体の生産性向上にも直結します。適切な管理手法を取り入れながら、企業と従業員の双方にとって最適な勤怠管理を実現することが求められています。

第2章 テレワークの勤怠管理方法

自己申告制とシステムを活用した管理

テレワークの勤怠管理には、自己申告制とシステムを活用した方法があります。自己申告制は、従業員が自身の勤務開始・終了時間を報告する形式であり、比較的簡単に導入できます。しかし、自己申告制には「実際の勤務時間と申告時間が異なる恐れがある」「残業時間が把握しにくい」といった課題があるため、適切な監視や定期的なチェックが求められます。これに対し、勤怠管理システムを活用する方法では、従業員の勤務状況をリアルタイムで記録し、管理者が容易に把握できるようになります。これにより、企業側の管理負担を軽減しながら、正確な労働時間の記録が可能になります。

オンラインでの出退勤管理の仕組み

テレワークにおいては、出退勤の管理を適切に行うために、オンライン上で打刻できる仕組みを整えることが重要です。多くの企業では、クラウド型の勤怠管理システムを導入し、従業員がパソコンやスマートフォンを使って出勤・退勤の打刻を行う方式を採用しています。

業務進捗と労働時間のバランス調整

勤怠管理を行う上で、労働時間だけでなく業務進捗の管理も重要です。テレワークでは、業務の進捗が見えにくくなるため、単に勤務時間を記録するだけでは不十分です。業務の遂行状況を確認しながら、適切なタスク管理を行うことで、労働時間と業務量のバランスを保つことが求められます。例えば、プロジェクト管理ツールを活用して、業務ごとの進捗を可視化することで、従業員の負担を適正に分配し、無駄な残業を防ぐことができます。また、定期的なミーティングを実施し、チーム全体で進捗を確認することも、効率的な勤怠管理の一環として有効です。

オンラインでの出退勤管理と業務日報の活用

クラウド型勤怠管理システムを導入することで、PCやスマホから出退勤を打刻し、不正打刻防止のためにGPSや顔認証を組み合わせることが可能です。しかし、打刻だけでは勤務実態を把握しにくいため、以下の方法を組み合わせる工夫が求められます。

  1. 業務日報の提出
    勤務終了時に、作業内容や進捗を簡単に報告。
    テンプレート化し、負担を軽減。
  2. タスク管理ツールの活用
    AsanaやTrelloを使い、業務の可視化と進捗管理を一元化。
  3. 定期的なオンライン報告会の実施
    上司と部下の進捗確認を定期的に行い、業務改善につなげる。

業務日報のメリットと課題

メリット
労働時間だけでなく業務内容も可視化できる
生産性向上につながる
チーム内の情報共有が円滑になる

課題
・報告作業が負担になる
・形骸化しやすい
・管理者の確認負担が増える

第3章 勤怠管理システムの活用と選び方

クラウド型勤怠管理ツールの特徴

テレワークにおける勤怠管理を効率的に行うためには、クラウド型の勤怠管理システムを活用するのが一般的です。クラウド型ツールの最大の特徴は、インターネット環境さえあればどこからでもアクセスできる点にあります。これにより、従業員は自宅や外出先からでも簡単に出勤・退勤の打刻が可能となり、管理者もリアルタイムで勤怠状況を把握できます。また、データが自動的に保存されるため、紙のタイムカードやエクセルシートを使用する場合と比べて、記録ミスや不正打刻のリスクを軽減できる点も大きなメリットです。
クラウド型ツールには、時間管理だけでなく、残業申請や有給休暇の管理機能が備わっているものも多く、業務の一元管理がしやすいのも特徴です。さらに、システムによっては給与計算ソフトと連携できるため、労務管理の負担を大幅に軽減できます。テレワークの普及に伴い、企業の規模を問わず多くの会社がこのような勤怠管理ツールを導入し、働き方の効率化を進めています。

GPS機能や打刻システムの利便性

テレワークの勤怠管理では、従業員がどこで業務を行っているのかを確認することが難しいため、不正な打刻や勤務実態の不透明さが課題になることがあります。これを解決するために、多くの勤怠管理システムではGPS機能を搭載し、出勤・退勤時の位置情報を記録できるようになっています。これにより、従業員が自宅以外の場所で仕事をしている場合でも、その所在地を把握することができ、適正な勤務管理が可能になります。また、顔認証や生体認証を活用した打刻システムも近年注目を集めています。従来のパスワード入力による出退勤記録では、第三者による不正打刻の可能性がありましたが、顔認証や指紋認証を導入することで、本人のみが正確に打刻できる仕組みを整えることができます。これにより、管理者はテレワーク中の従業員が確実に勤務していることを確認でき、企業の信頼性向上にもつながります。

導入時にチェックすべきポイント

勤怠管理システムを導入する際には、企業の業務形態に合ったシステムを選ぶことが重要です。まず、システムが労働基準法に準拠しており、適正な労働時間管理が可能かを確認する必要があります。特に、残業時間の自動集計機能や、36協定違反を防ぐための警告機能が備わっているかどうかをチェックすることが望ましいでしょう。
次に、導入後の運用のしやすさも重要です。従業員が日々使用するツールであるため、シンプルな操作で誰でも簡単に打刻できることが求められます。また、管理者側の画面も使いやすく、リアルタイムで労働時間を確認できるものを選ぶことが望ましいです。さらに、給与計算ソフトや業務管理システムと連携できるかどうかも、選定時の大きなポイントとなります。最後に、セキュリティ対策が十分に講じられているかも確認が必要です。勤怠管理システムには従業員の個人情報や労働時間に関するデータが保存されるため、情報漏えいや不正アクセスを防ぐための対策が施されているシステムを選ぶことが求められます。特に、クラウド型のシステムを利用する場合は、データの暗号化や二段階認証の有無など、セキュリティ機能を細かく確認することが重要です。

第4章 テレワークの勤怠管理で気をつけるポイント

労働時間の適正管理と健康維持

テレワークでは、従業員が長時間労働に陥るリスクが高まります。オフィス勤務と異なり、通勤時間が不要になることで勤務時間の境界が曖昧になり、業務の終了時間が明確でなくなることが原因です。また、適切な休憩を取らないまま業務を続けてしまうケースも少なくありません。そのため、企業側は労働時間の適正管理を徹底し、従業員の健康を守る取り組みが求められます。例えば、勤務時間が過剰にならないようにアラートを出すシステムを導入することで、残業時間の抑制につながります。また、定期的な休憩時間を設けるよう促す通知機能を活用することも有効です。従業員自身も、勤務開始と終了の時間を明確にし、オンとオフの切り替えを意識することが重要になります。企業としては、テレワーク時の健康管理の一環として、定期的なアンケートや面談を実施し、従業員の労働環境を把握することが望ましいでしょう。

適切なコミュニケーションの確保

テレワークでは、従業員同士のコミュニケーションが不足しがちです。オフィスでは気軽に声をかけることで仕事の進捗確認や相談ができましたが、リモートワークでは意識的に連絡を取らないと、業務の遅延や情報共有の不足が生じる可能性があります。特に勤怠管理においては、従業員が「働いていること」を適切に報告できる環境を整えることが重要です。そのため、定期的なオンラインミーティングの実施や、チャットツールを活用したリアルタイムな情報共有が求められます。例えば、出勤時に「おはようございます」とメッセージを送り、退勤時に「業務を終了します」と報告するルールを設けることで、従業員が適切に業務を行っていることを可視化できます。また、業務の進捗や成果を週ごとに共有する仕組みを作ることで、上司や同僚が互いの業務状況を把握しやすくなります。さらに、企業は従業員が孤独を感じないような配慮も必要です。雑談を含めたオンライン交流の場を設けたり、定期的にオフィス出勤を促すハイブリッド勤務の導入も、コミュニケーションの活性化につながります。

業務の透明性を高める工夫

勤怠管理を適切に行うためには、業務の透明性を高めることも重要です。テレワークでは、上司や同僚が目の前にいないため、どのような業務をどれくらいの時間かけて行っているのかが見えづらくなります。この透明性の欠如が、適正な労働時間の管理を難しくする要因の一つです。これを解決するためには、タスク管理ツールを活用して、業務の進捗を可視化することが効果的です。例えば、プロジェクトごとにタスクを割り振り、それぞれの進捗状況をリアルタイムで確認できるようにすることで、業務の透明性を確保できます。また、業務内容や成果物を日報や週報の形で共有することで、従業員がどのような仕事をしているのかを明確にすることも有効です。また、目標設定と評価基準を明確にすることも、業務の透明性を高めるうえで重要です。従業員が何を求められているのかを理解しやすくすることで、労働時間だけでなく、成果に基づいた適正な評価を行うことが可能になります。企業がこのような取り組みを強化することで、テレワーク環境においても公正な勤怠管理が実現できるでしょう。

第5章 効率的な勤怠管理を実現するための企業の取り組み

労働時間ルールの明確化と周知

テレワークにおける勤怠管理を適切に行うためには、企業が労働時間のルールを明確にし、それを従業員に周知することが重要です。オフィス勤務では、始業時間や終業時間が固定されていることが多いため、比較的容易に労働時間を管理できます。しかし、在宅勤務では勤務時間が個々の状況に応じて変動しやすく、曖昧になりがちです。そのため、企業は「何時から何時までを勤務時間とするのか」「休憩時間はどのように確保するのか」「残業を行う場合の申請方法」など、具体的なルールを定めることが求められます。また、これらのルールを従業員に徹底させるためには、就業規則や社内ガイドラインに明記し、研修や説明会を通じて定期的に確認することが効果的です。特に、テレワークの導入が新しい企業では、従業員が勤怠管理の仕組みを十分に理解していない可能性があるため、分かりやすいマニュアルを用意し、具体的な運用方法を示すことが大切です。

評価制度と勤怠管理の連携

テレワークにおける勤怠管理をより効果的に機能させるためには、評価制度と勤怠管理を適切に連携させることも重要です。従業員の勤務時間や業務の進捗状況を正確に把握できるようにし、それを公正な評価につなげることで、モチベーションの向上や業務効率の改善が期待できます。時間管理だけでなく、業務の成果を重視した評価基準を設定することが重要です。テレワークでは、「どれだけの成果を出したか」も重要になってくるため、企業は従業員ごとに目標を設定し、それを基に評価を行う仕組みを整える必要があります。例えば、「プロジェクトの達成度」「業務のスピードと質」「チームへの貢献度」など、具体的な評価基準を設けることで、勤務時間に依存しない公平な評価が可能になります。評価の透明性を高めるために、定期的なフィードバックを行うことも重要です。上司と従業員の間で定期的に面談を実施し、業務の進捗や勤怠状況について確認しながら、必要に応じて改善策を検討することで、より適切な勤怠管理が実現できます。

テレワーク環境に適した社内ルールの策定

テレワークの勤怠管理を円滑に進めるためには、企業がテレワーク環境に適した社内ルールを策定することも不可欠です。オフィス勤務とは異なり、在宅勤務では業務の進捗や労働時間を目視で管理することができないため、より具体的なルールを設ける必要があります。例えば、「業務開始時と終了時にオンラインで報告する」「一定時間ごとに業務進捗を共有する」「会議の前後に議事録を作成し、タスクを明確化する」など、業務の透明性を高める仕組みを導入することで、適正な勤怠管理を実現できます。また、テレワークの適用範囲や条件を明確にし、「週に何日までテレワークが可能か」「どの業務が在宅勤務に適しているか」などを具体的に示すことも、労働環境を整備するうえで重要です。さらに、テレワークの生産性を向上させるためには、従業員が安心して働ける環境を整えることも必要です。例えば、通信環境や作業スペースの整備を支援するために、在宅勤務手当を支給する企業も増えています。こうした取り組みを行うことで、従業員がより快適に業務を遂行できる環境を提供し、効果的な勤怠管理につなげることができます。

まとめ
テレワークの普及に伴い、勤怠管理の重要性はますます高まっています。在宅勤務では、オフィス勤務とは異なり、労働時間や業務の進捗を直接確認することが難しくなるため、企業は適切な管理方法を導入する必要があります。クラウド型勤怠管理システムやGPS機能を活用した打刻システムを導入することで、正確な勤務時間の記録が可能となり、労働時間の可視化が実現できます。また、労働時間のルールを明確にし、適切な評価制度と連携させることで、従業員のモチベーションを高めながら、業務の効率化を図ることができます。さらに、業務の透明性を高める工夫や、適切なコミュニケーションの確保も、勤怠管理の成功には欠かせません。企業がこれらの取り組みを積極的に行うことで、従業員の働きやすさが向上し、生産性の向上にもつながります。テレワークを効果的に運用するためには、単なる勤怠管理にとどまらず、企業文化や業務プロセス全体を見直し、より柔軟で効率的な働き方を目指すことが重要です。適切な勤怠管理を実現し、企業と従業員の双方にとってより良いテレワーク環境を築いていきましょう。

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監修者名:社会保険労務士・行政書士オフィスウィング 板羽愛由実