従業員の健康こそが生産性向上のカギ!健康経営のススメ③
働き方改革
目次
従業員の健康こそが生産性向上のカギ!健康経営のススメ③
前回は、健康経営を取組むための方法をご紹介しました。今回は、より具体的な取組みをご紹介したいと思います。
ヘルスリテラシーとは?
具体的な取組みをご紹介する前に、是非知っていただきたい言葉が「ヘルスリテラシー」という言葉です。
ヘルスリテラシーとは、【健康情報にアクセスし、理解し、使える能力】のことを言います。
従業員のヘルスリテラシーの高低は、従業員の健康だけではなく職場の健康や生産性にも影響を与えます。
ヘルスリテラシーを、職場において生涯を通じて育てることができる資産と考えると、職場での健康教育等を通じて個人のヘルスリテラシーが高まります。望ましい生活習慣や健康の獲得につながること、さらに個人が健康になるだけでなく、ヘルスリテラシーが高まった従業員が周囲への情報提供や、健康的な行動をさらに広めて、健康的な職場を形成していくことが期待されます。
そういった意味では、職場におけるヘルスリテラシーの向上は、健康経営のゴールのひとつとも言えるかもしれません。
食生活改善に向けた取組み
適切な量と質の高い食事は、生活習慣病予防の基本のひとつです。主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスのよい食事が理想です。また、栄養バランスのよい食事に加え、減塩や十分な量の野菜と適量の果物を摂取することも重要です。
企業側は、従業員自らが適切な量と質の食事を選択できるようセルフケア能力を高めるための企画や実践に取組むことが大切です。
取組みのポイントは、栄養バランスのよい食事を自ら選択できるような働きかけです。具体的な取組み例としては、健康に配慮した仕出し弁当の利用、外食やコンビニ利用の場合でもバランスよく食べられるようなメニューの選択や組み合わせの仕方のアドバイスを行うことなどが挙げられます。食べ物だけでなく飲み物についても配慮を行いましょう。社内に自動販売機を設置している場合、販売している飲み物を低糖・低カロリーのものに変更する、ウォーターサーバーを設置する、といった取組みもお勧めです。
また、1日3食、規則的な食生活のリズムを自ら作れるような働きかけも大切です。特に朝食をとらない従業員が多い場合には、社員食堂などで朝食を提供している企業もあります。
運動機会の増進に向けた取組み
日頃から身体を動かすことは、健康増進はもとより、様々な健康リスクを下げることに効果があります。科学的根拠に基づく適度な身体運動や運動の効果としては、以下のものが挙げられます。
・虚血性心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、骨粗しょう症、結腸癌などの罹患率や死亡率の低下
・メンタルヘルスや生活の質の改善
・腰痛や膝痛の改善
・風邪に罹患しにくくなる
・健康的な体型を維持することで自己効力感が高まる 等
しかし、就労世代は運動が習慣化されていなかったり、歩くことが少ないなど、運動や身体活動が不足しやすい傾向にあるのが現状です。
これに対して企業側は、従業員が定期的な運動の機会を持てるようにするための企画や実践に取組むことが必要です。
運動習慣のない従業員にいきなりハードな目標を設定しても、継続するのは難しいと思います。まずは、日常生活で体を動かす工夫をしてもらうための支援をするのが良いでしょう。
エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を利用する、電車の一駅間を歩く、休憩時間にウォーキングを行うことを推奨するなど、実践しやすいことから始めます。また、全従業員に対して歩数計を配布し、それを活用して個人またはチーム対抗による歩数のランキング競争や成績に応じた表彰を行うなど、楽しく競い合うことで活動量アップにつなげるような取組み例もあります。
楽しみながら運動習慣を身につけるきっかけづくりとして、ウォーキング大会やボウリング大会などのイベントを行っている企業もあります。さらに、クラブ活動費やフィットネス利用料を一部負担し、運動習慣を身につけることを支援するという取組み例もあります。
いずれにしても、普段の生活の中でできることから始め、運動習慣の定着へとつなげていくことがポイントになります。
感染症予防対策
感染症というと、よく耳にするのがインフルエンザやノロウィルスなどではないでしょうか。しかしこれ以外にも1年を通じて様々な感染症の流行があります。どんな感染症がどの時期に流行しているかを日頃からチェックし、流行状況と予防策について従業員全員と共有することが感染症の予防につながります。衛生委員会などでも積極的に取りあげ、情報発信を行うと良いでしょう。尚、以下より感染症情報を入手することができます。
◆国内の感染症情報(国立感染症研究所感染症疫学センター)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/idsc.html
◆東京都内の感染症情報(東京都感染症情報センター)
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/
企業側の取組みとしては、職場において集団での予防接種を行う、従業員の予防接種の費用補助を行う、などが挙げられます。毎年行うことで従業員の意識付けにも役立ちます。また、日頃からできる取組みとしては、マスクを自由に利用できるよう常備し、出入り口にはアルコール消毒液を設置し利用を徹底する、トイレや給湯室などに液体せっけん、ペーパータオルを備える、といったことが挙げられます。
感染症にかかってしまった場合の対応策を考えておく必要があります。(就業規則への規定等)
メンタルヘルス対策
メンタルヘルス対策は、職場環境の改善や労働者のストレス耐性向上を中心とする「一次予防」、メンタルヘルス不調者の早期発見と対応を中心とする「二次予防」、メンタルヘルス不調者の職場復帰や再発予防を中心とする「三次予防」に分類できます。また、役割担当別に4つのケア(セルフケア・ラインによるケア・事業場内産業保健スタッフ等によるケア・事業場外資源によるケア)が必要とされ、特に「セルフケア」・「ラインによるケア」が中心的な役割を担います。
メンタルヘルス対策の実施体制については、衛生委員会などで調査・審議を十分に行った上で整備を進めると良いでしょう。
具体的な取組みとしては、メンタルヘルス対策の推進者を一般の従業員や管理監督者の相談窓口として周知し、できれば産業医などの専門スタッフと定期的なミーティングの機会を設けて連携を図りながら支援することが推奨されます。しかし、中には社内の人にはなかなか相談しづらいという従業員もいるかも知れません。その場合、外部の相談窓口と契約し、利用を促すという方法もあります。
メンタルヘルス不調者が出た場合の対応策として、職場復帰プランを作成しておくことや、 職場復帰後の短時間勤務制度や配置転換、業務制限などについても予め規定しておくことが必要です。
そして、日頃からの意識づけとして、セルフケア・ラインケアの研修を定期的に実施し、管理監督者による部下の変化への気づき・対処や労働者自身によるストレス耐性向上について学んでおくことも重要です。
過重労働対策
過重労働対策については、実態の把握から始め、具体的な数値目標を立てて取組むのが良いでしょう。労働基準法の改正により長時間労働の削減や年休取得の義務化など、これまでより過重労働の取り締まりが厳格化されますので、全社的な目標として推進するには良い時期だと思います。
また、過重労働対策を実現するためには風土の改革も必要です。「帰りづらい」、「年休がとりづらい」という雰囲気をなくすため、管理職が積極的に早期退社の声掛けを行い、年休取得の後押しをすると良いでしょう。また、効率よく働き、残業が少ない従業員を評価するようなしくみがあるとモチベーションにもプラスの効果があるのではないでしょうか。
生産性向上のカギは労働者の健康にあります!
皆さまの企業も健康経営を始めてみませんか?
参考:
- 食生活指針の解説要領/厚生労働省/2016年/19ページ
- 健康づくりのための身体活動基準/厚生労働省/2013年/2ページ
- 健康経営実務必携/稲田耕平・阿藤通明・坂野祐輔/日本法令/2017年/274ページ
- 健康経営アドバイザーテキスト/東京商工会議所/2018年/128ページ