適切な方法で労働者の過半数代表者を選出されていますか?
人事労務
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適切な方法で労働者の過半数代表者を選出されていますか?
2019年4月に労働基準法施行規則が改正され、労働者の過半数代表者の選出要件が厳格化されました。
具体的には、選任について「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」という要件が追加されました。
みなさんは、過半数代表者をどのように選出していますか?
会社側が指名した人を過半数代表者に選任するなどの方法をとっていませんか?
過半数代表者の選出方法に問題がある場合、労使協定自体が無効となります。
36協定で言えばそれが無効になるため、会社が従業員に対して行った残業指示が違法になってしまうので注意が必要です。
今回は、この過半数代表者の選出について取り上げますので、改めて自社での選出方法について点検してみてはいかがでしょうか。
労働者の過半数代表者の要件
労働者の過半数代表者は以下いずれにも該当する人でなければなりません。
①労働基準法第41条第2号に規定する管理監督者でないこと。
②法に規定する協定などをする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること。
③使用者の意向に基づき選出された者でないこと。
① について
労働基準法第41条第2号に規定する「管理監督者」とは、「労働条件の決定その他の労務管理について経営者と一体的な立場にある者」とされています。つまり、管理職の役職になれば自動的に管理監督者になるわけではなく、管理監督者に該当するか否かは、その労働者の立場、職務内容、権限等を踏まえて実態に応じて判断されます。
具体的には、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること」「重要な責任と権限を有していること」「現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあること」「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」が判断基準とされています。
②について
過半数代表者の具体的な選出方法については後述します。
③について
これが2019年4月より施行された新たな要件です。
会社が指名した労働者に対して形式的に選挙を行い選任する、といった方法は認められず、選出過程に問題のある過半数代表者との間に締結した労使協定は無効となりますので注意が必要です。
「労働者の過半数」でいう「労働者」とは?
「労働者の過半数」でいう「労働者」とは、労働者のすべてをいいます。よって、管理監督者や年少者、時間外労働に制限のある育児・介護中の労働者や休職者、パートタイム労働者、有期雇用労働者、嘱託社員、出向者等、在籍するすべての労働者を含めなければなりません。
過半数代表者の選出方法
過半数代表者の選出方法は、労使協定の締結等を行う者を選出することを明らかにして、つまり何のために選出するのかを明らかにした上で、投票、選挙等の方法による手続きで選出する必要があります。この、「選挙等」の「等」には、労働者の話合い、持ち回り決議など労働者の過半数が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが該当します。
尚、閲覧やメールによる選出も、労使協定の締結等を行う者を選出することを明らかにして実施し、その実施が投票、挙手等の民主的な手続きによる方法で選出されれば問題ありません。
前述したように、会社が指名した労働者を過半数代表者に選任することや、社員親睦会の幹事などを自動的に過半数代表者に選任することは認められません。
会社は、過半数代表者であること、過半数代表者になろうとしたこと、過半数代表者として正当な行為をしたことを理由に、解雇、賃金の減額、降格等、労働条件について不利益な取扱いをしてはなりません。
この「過半数代表者として正当な行為」には、法に基づく労使協定の締結の拒否、1年単位の変形労働時間制の労働日ごとの労働時間についての不同意等も含まれます。
過半数代表者の任期
過半数代表者を任期制とすることについて、法令上、これを禁止する規制はありません。36協定の有効期間が1年間であることなどを考慮すれば、任期も1年程度とすることが合理的ではないでしょうか。
過半数代表者の選出が必要な労使協定
労使協定が要件となっている労働基準法上の制度としては次のようなものが挙げられます。
①時間外・休日労働協定(36協定)
②社内預貯金等の貯蓄金管理制度
③賃金控除の協定
④1か月単位の変形労働時間制
⑤フレックスタイム制
⑥1年単位の変形労働時間制
⑦1週間単位の非定型的変形労働時間制
⑧一斉休憩の適用除外
⑨代替休暇
⑩事業場外のみなし労働時間
⑪専門業務型裁量労働制
⑫時間単位での年次有給休暇の付与
⑬年次有給休暇の計画的付与
⑭年次有給休暇の賃金を標準報酬日額とする協定
過半数代表者は、実際に労使協定を締結する時点で法律の定める要件を満たしていれば問題ありません。そのため、労使協定締結後に、当該過半数代表者が管理監督者になった場合や退職した場合でも、有効に締結された協定の効力に影響はありません。
参考:
- 36協定の締結当事者となる過半数代表者の適正な選出を!(リーフレット)|厚生労働省|2016年|2ページ
- トップ・ミドルのための採用から退職までの法律知識|中央経済社|2013年|1172ページ