「SOGIハラ」というハラスメントを知っていますか?

人事労務


「SOGIハラ」というハラスメントを知っていますか?

 

過去2回のブログで、パワハラとセクハラを取り上げ、その考え方や対策などについてお伝えしました。パワハラとセクハラ以外にも、数あるハラスメントの中で、職場で起こりやすいもののひとつが今回取り上げる「SOGI(ソジ)ハラ」です。

そもそも、「SOGI」とは何なのか?おそらくこの言葉自体初めて聞かれたという方も多いのではないでしょうか。

今回は「SOGIハラ」とそれに関わる事項について取り上げたいと思います。

 

SOGIとは?

 

「SOGI」とは、多様な性のあり方を表す言葉で、好きになる人の性別(Sexual Orientation)と自分の性別の認識(Gender Identity)の英語の頭文字をとった言葉です。

後述する「LGBT」が性的マイノリティの総称であるのに対し、SOGIは性的指向や性自認という、『誰もが持っている特性』を表す言葉になります。

聞きなれない言葉が多いと思いますので、もう少し説明を続けます。

「性的指向」とは、恋愛感情や性的な関心・興味が主にどの性別に向いているかをいいます。

例えば、性的指向が同性のみに向いている人はゲイ・レズビアン、同性にも異性にも向いている人はバイセクシュアル、異性のみに向いている人はヘテロセクシュアルなどと呼ばれます。

一方で、「性自認」とは、「私は女である/男である」等の、自分がどの性別であるか、またはないかということについての内面的・個人的な認識をいいます。また、「私はどちらの性別でもない」「私はどちらの性別なのか分からない」という認識を持つなど、性自認が身体の性と一致しない人や、どちらの性別にも違和感を覚える人をトランスジェンダーといいます。

 

LGBTとは?

 

SOGIに関する説明の中で「LGBT」という言葉が出ましたので、解説します。

最近、メディアなどで取り上げられることが多いため、LGBTという言葉は耳にしたことがある方は多いのではないでしょうか?

LGBTは、L:レズビアン、G:ゲイ、B:バイセクシュアル、T:トランスジェンダーの頭文字をとって並べたもので、それぞれの意味は前述の通り、レズビアンは女性として女性が好きになる人、ゲイとは男性として男性が好きになる人、バイセクシュアルとは、好きになる対象が女性・男性の両性である人、トランスジェンダーとは、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人のことをいい、LGBTという言葉は性的マイノリティの人たちを表す総称として用いられます。(ただし、性のあり方は実に多様で、実際は性的マイノリティがLGBTだけに限られるわけではありませんのでご注意ください。)

では、LGBTの人たちは実際どれくらいいると思いますか?

質問の仕方やサンプル等によってかなりばらつきがあるものの、日本でのLGBTの割合は3~10%程度だと言われています。仮に5%だとすると、20人に1人がLGBTだという計算になります。つまり、20人の労働者がいる会社であれば、うち1人はLGBT当事者がいることになるかもしれないのです。

近年、大手企業を中心にLGBT対応を社内規程などに定め、様々な取組みを行う企業が増えてきています。一方で、「ウチには関係ない」と、課題から目をそらしてしまう企業も存在します。しかし、この数字を見たら決して他人事ではないことがお分かりいただけるのではないでしょうか。勤務している社員が、差別や働きづらさに苦しんでいる可能性があるのです。

 

SOGIハラとは?

 

性的指向・性自認に関連して、差別的な言動や嘲笑、いじめや暴力などの精神的・肉体的な嫌がらせをすることや、望まない性別での生活の強要、不当な異動や解雇をすることなどを「SOGIハラ」といいます。また他人が本人の同意なくその性的指向や性自認を洩らす、「アウティング」についてもSOGIハラにあたります。

例えば、職場や飲み会の場でホモやレズの話題、「男のくせに~」「女のくせに~」といった話しを無意識のうちにしていることはありませんか?悪気なく口にした話題であっても、性的指向・性自認について他者と異なる特性を持つ労働者には非常に大きな精神的苦痛をもたらすことになるのです。

 

SOGIハラをめぐる国の動向

 

SOGIハラをめぐる国の動向をご紹介しましょう。

2017年1月から改正施行された「セクハラ指針」において、『被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する職場におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。』と、性的マイノリティに対するハラスメントもセクハラ指針の対象となる旨が明確化されました。

また、2018年1月に公表されたモデル就業規則の第15条には、『性的指向・性自認に関する言動によるものなど職場におけるあらゆるハラスメントにより、他の労働者の就業環境を害するようなことをしてはならない。』との内容が規定され、性的指向や性自認への理解を深め、ハラスメントが起こらないようにすることの重要性を訴えています。

企業に求められる対応

 

前述の通り、SOGIハラについてはセクハラやパワハラよりも、悪気はないけれど、知らず知らずのうちにハラスメントをしていた、ということがあります。そのようなことのないように、企業としては対策を講じる必要があります。

セクハラやパワハラに関する禁止規定を設けている企業は多いですが、SOGIハラについての禁止規定を設けている企業はまだ少ないのではないでしょうか。SOGIハラによる被害が発生しないように、会社として、禁止規定を設けることは非常に重要かつ、最初に取組むべき基本的な対応です。防止規定の内容としては、既存のセクハラ・パワハラ防止規定にならって、定義や禁止行為の例、懲戒を行う旨とその種類を明記することが上げられます。

これは、LGBTであることを明らかにしている労働者がいないとしても、自らの性的指向・性自認をまだ明らかにしていない労働者がいることを念頭に、講ずべき施策であるといえます。

また、相談窓口の設置や、相談があった際の対応のルールも整備をしておきましょう。適切な対応が行えるよう、相談担当者向けの対応マニュアルを整備し、ハラスメントの内容と対処方法について研修を実施しておく必要があります。

さらに、人事部門や管理職層、一般社員に対して周知・啓発のための研修を実施することも重要です。パワハラやセクハラに関する啓発と同様に、管理職研修や階層別研修、新人研修などのコンテンツのひとつに盛り込むことで、継続的な受講による理解・定着が期待できます。

自らの性的指向・性自認をまだ明らかにしている労働者がいない場合には『自社にはいない』と考えがちですが、それは『いない』のではなく『明らかにしていない』だけかもしれません。自社にもLGBT当事者が必ずいる、ということを前提にしてあらかじめ対応を検討しておくことが重要です。

 

PRIDE指標

 

企業などでのLGBTに関するダイバーシティ・マネジメントを支援する任意団体「work with Pride」は10月11日、職場におけるLGBTへの取り組みを評価する「PRIDE指標※」の認定企業を発表しました。認定は今回で3回目になります。

※「PRIDE指標」とは、職場におけるLGBTなどのセクシュアル・マイノリティへの取組みの評価指標のことで、以下の評価指標の頭文字をとったものです。

Policy (行動宣言)・Representation (当事者コミュニティ)・Inspiration (啓発活動)

Development (人事制度・プログラム)・Engagement/Empowerment(社会貢献・渉外活動)

上位の受賞企業では、全管理職への年1回以上のLGBTに関する研修の継続的な実施、社員向け相談窓口の設置、同性パートナーへの慶弔休暇や結婚祝金など社内制度等の適用を実施、「性的指向・性自認(LGBTを含む)などを理由に不公正な処遇をしない」との行動宣言の実施、「だれでもトイレ」の導入などの施策を行っているそうです。

マイノリティの人たちが働きやすいと感じる職場は、すなわち全ての人たちが働きやすいと感じる職場でもあります。

皆さまの企業で働く社員が定着し、自身の能力を発揮していきいきと働いてもらうために、SOSIハラ対策についてもご検討されてみてはいかがでしょうか。

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